理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 174
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骨・関節系理学療法
成長期投球肩障害に対するメディカルチェック
玉川 智子橋口 宏小塚 和豊大熊 康弘荻野 拓也正能 千明吉田 真一泉川 幸恵大場 俊二
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抄録

【目的】スポーツ障害に対するメディカルチェックは診断,治療,予防のための重要な手段である.成長期の肩関節スポーツ障害としては反復する投球動作によって生じる上腕骨近位骨端線離開を病態とするリトルリーグショルダーがある.今回,リトルリーグショルダー症例に対してメディカルチェックを行い,その身体的特徴から成長期投球肩障害に対するリハビリテーションアプローチについて検討を行った.

【方法】対象はリトルリーグショルダー106例,年齢は平均12.0歳(9~16歳),スポーツ種目は野球102例,ソフトボール4例で,ポジションは投手46例,捕手9例,内野手35例,外野手16例であった.発症から初診までの期間は平均2.8週(当日~24週)であった.単純X線分類では,外側離開型を88例,全体離開型を14例,すべり型を4例に認めた.全例に投球動作中止とストレッチ及び筋力訓練を中心とした保存的治療を行った.初診時に全例に対してメディカルチェックを行った.チェック項目としては圧痛,関節可動域・不安定性,筋緊張,筋バランスであり,これらについて全身的なチェックを行った.

【結果】メディカルチェックの結果,指床間距離の拡大が42.5%,タイトハムストリングが39.6%,踵臀間距離の開大が26.4%の症例に認め,多くの症例で下肢・体幹の筋緊張を有していた.投球側の肘関節不安定性は37.7%に認め,肩甲骨周囲筋の筋力低下や不均衡は15.1%の症例に認められた.肩関節後方筋群の緊張の指標となる90度外転位回旋可動域制限は全例に認められた.健側と比較して,外旋可動域の増加は平均25.2度,内旋可動域の減少は平均55.0度であった.肩関節90度外転位回旋可動域は健側比で16.6%の制限が認められた.

【考察】今回行った検討より,リトルリーグショルダーを発症した選手には肩関節のみならず下肢・体幹を含めた全身的な筋緊張や肩甲骨周囲筋の不均衡が認められた.リトルリーグショルダーの発症要因としては骨端線脆弱性や投球の機械的負荷だけではなく,全身的な筋緊張や筋不均衡が投球フォームや肩関節に影響するためである考えられる.このため,リハビリテーションとしては全身的な筋緊張や肩関節90度外転位回旋可動域制限を改善するためのストレッチを中心とすることが重要であり,また障害の原因となっている筋緊張や可動域制限が改善すれば骨端線修復以前でも投球練習の再開は可能であると考えられた.さらに,筋緊張などのリスクファクターをスクリーニングするメディカルチェックを定期的に行うことは,リスクファクターを有する選手に対してコンディショニング指導を行う上でも重要であると考えている.

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© 2008 日本理学療法士協会
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