理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 177
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骨・関節系理学療法
野球選手の肩関節可動域特性
投球障害との関連について
濱田 太朗上野 隆司中川 法一山野 仁志元脇 周也小柳 磨毅
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抄録
【目的】
投球競技者の肩関節可動域が外旋方向にシフトしているとする報告は多いが、可動域の測定方法には肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の動きを含んでいるため、その制限因子については不明な点が多い。
そこで野球選手の肩関節2nd内外旋可動域測定を肩甲骨を固定した方法(以下true)と肩甲骨を固定しない方法(以下combine)で測定し、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の各々の可動性を評価して障害との関連性を検討した。

【対象と方法】
対象は高校野球部にて肩関節に投球時痛(late cocking~acceleration期)を訴えた選手10名(P群)と投球時痛の訴えの無い選手10名(NP群)とした。方法は投球側と非投球側の肩関節2nd内旋および外旋の各trueとcombineでの可動域を測定し、各可動域結果をP群とNP群で比較検討した。統計処理には、対応の無いt検定を用いた。

【結果】
外旋trueはNP群投球側108.5°±9.1非投球側98.5°±7.5、P群投球側105.0°±11.0非投球側97.5°±7.2と両群とも投球側が有意に増大していた(P<.05)。外旋combineではNP群投球側153.5°±14.4非投球側131.5°±12.7と投球側が有意に増大していたが(P<.01)、P群では投球側125.0°±12.5非投球側131.5°±11.3であり両側差は無かった。
内旋trueはNP群投球側53.5°±17.7非投球側52.0°±15.3と両側差は認めず、P群では投球側35.0°±9.7非投球側44.0°±9.7と投球側が有意に低下していた(P<.05)。同様に内旋combineにおいてもNP群投球側87.0°±20.4非投球側90.0°±13.5と両側差は認めず、P群では投球側65.0°±11.3非投球側81.0°±6.6と投球側が有意に低下していた(P<.01)。

【考察】
外旋可動域はcombineにおける両群の差が拡大したことから、NP群では肩甲胸郭関節の可動性が大きく、逆にP群では肩甲胸郭関節の可動性が低下していると考えられた。NP群の内旋可動域はtrue・combine共に両側差を認めないのに対し、P群の投球側ではtrue・combine共に有意に低下しており肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の可動性低下が考えられた。投球時の筋活動特性として、follow through期ではブレーキングマッスルとして棘下筋や小円筋などが働き、late cocking期には肩甲下筋に加え、前鋸筋等の肩甲帯周囲筋も肩甲胸郭関節の安定性を高めるために働く。P群ではこれらの筋群が何らかの原因で柔軟性が低下した結果、投球側内旋trueや内外旋combineの可動域制限に繋がったのではないかと考えられた。
今回の結果から、野球選手の肩関節可動域は肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節からの制限を受け、それぞれの制限は痛みの発現と関連する可能性が示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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