理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 561
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骨・関節系理学療法
骨盤アライメント対称化エクササイズ(PelCon)がドロップジャンプ時の膝関節外反に及ぼす効果
無作為化対照研究
吉原 孝子能 由美杉野 美里堀 泰輔末田 達也杉野 伸治一瀬 浩志佐々野 梨絵中山 怜子蒲田 和芳
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抄録

【目的】
膝前十字靭帯損傷(ACL)の受傷メカニズムに着地時の膝関節外反が関与し(Olsen 2003、Boden 2000、Logan 2004)、その矯正がACL損傷の予防に効果的である(Hewett 1999、Caraffa 1996)。膝関節外反矯正のため筋力トレーニング、バランストレーニング、プライオメトリックトレーニング、着地動作のトレーニングなど行なわれてきたが、骨盤や体幹への注目は十分とはいえない(Kibler 1999、Zazulak 2007)。本研究では骨盤・股関節アライメントの対称化に効果的なPelConが、ドロップジャンプ中の膝関節外反に及ぼす効果を検証することを目的とする。
【対象】
取込基準は健常な20歳以上の男女であり、除外基準は腰部・骨盤帯の疾患または疼痛、内科的リスク、精神障害、囚人、妊婦および出産後1年以内とした。ヘルシンキ宣言の精神に基づく研究参加同意書に署名した対象者23名(年齢20.3±1.5歳)を、無作為にPelCon(PC)群(12名)とコントロール(C)群(11名)の2グループに割り付けた。
【方法】
介入期間は4週間であり、週5回の運動介入を実施した。PC群およびC群はともに下肢のアライメントコントロールを目的とした10種目からなる運動プログラム(Hewett 1996)を実施した。さらに、PC群はストレッチポールを用いた骨盤対称化を目的としたエクササイズ(PelCon)を実施した。動作課題は30cmの台からのドロップジャンプを採用し(Noyes 2005)、その着地直前、膝最大屈曲位、離地直前について、大転子間、膝関節間、足関節間の距離をデジタルカメラ画像上で計測した。両膝関節の間隔を、大転子と足関節の中点間の距離により正規化した値をKnee Width Ratio(KWR)とし、観察因子とした。統計学的検定には、反復測定2元配置分散分析およびFisher LSD(有意水準p<0.05)、Pearsonの相関係数を用いた。
【結果】
着地直前、膝最大屈曲位、離地直前のいずれにおいても、両群ともに介入前後のKWRに有意な変化は認められなかった。介入前後のKWRの相関係数はC群が0.82、PC群0.48であった。KWRに10%以上の変化は、C群で11名中2名(ともにKWRが上昇)であったのに対し、PC群では12名中7名(うち3名はKWRが減少)であった。
【考察】
PelConは骨盤と股関節の対称化を目的としており、その効果として下肢伸展挙上テストの陰性化など荷重伝達機能の改善が期待される。本研究では、PelConの結果として、膝外反が増強した3例と改善した4例が観察された。膝外反が増強した3例については、骨盤および股関節のアライメント変化に対して、神経筋の協調や固有受容機能の適応が追従できなかったためと推測される。一方、著明な外反矯正効果が得られた4名については、骨盤アライメントの対称化や安定化が得られたことが要因として考えられる。今後、PelConの効果に関して、より客観的な指標を用い、固有受容機能、荷重伝達機能、骨盤アライメントの変化などの研究が必要と考えられる。

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© 2008 日本理学療法士協会
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