理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 610
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骨・関節系理学療法
関節リウマチ有痛性肩関節に対するMTA
シングルケースデザインによる検討
島原 範芳
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抄録

【はじめに】関節リウマチは「滑膜炎」を主病変とする原因不明の炎症性消耗性疾患である。RA患者にとって疼痛は大きな愁訴の一つである。しかしRA患者が訴える疼痛はその内容の吟味によってセラピストがコントロール可能であるものが存在するのではないかと考えられる。
今回、当院入院中のRA患者の有痛性肩関節に対しMTAを施行し、その即時効果をシングルケースデザインにて評価したので若干の私見を交えて報告する。
【調査対象】対象は2006/11RA発症により2007/3からRAコントロール目的にて当院入院中の54歳男性(stageI classI)。介入期間中のRAコントルール状況は良好であった。X-P所見は右肩関節stageI・AHI10mm 。MRI 所見での滑膜炎(-)であった。現症:右肩関節の激しい運動時痛と自動可動域の制限・三角筋及び大胸筋に筋筋膜性疼痛あり。自動運動時には三角筋大胸筋溝及び三角筋前中部線維間において激しい運動時痛を伴う。肩関節での炎症所見は認められず炎症による疼痛は主因からは除外出来ると推察する。
【調査方法】シングルケースデザイン(交替操作型実験デザイン)を用いた。対象治療は「MTA 及びROM訓練」、コントロール治療は「ホットパック及びROM訓練」とした。効果判定の指標として介入前後のROM・VAS及びFSを記録した。ROMについてランダマイゼーション検定を用いて分析を行った。有意水準は5%未満とした。症例に対し本研究の目的及び内容を説明し研究参加への同意を得た。
【結果】ROMの改善角度はMTA介入期が平均10°改善率7.85%、ホットパック介入期が平均2.5°改善率2.04%で有意差は認められなかっ(ROM; P=0.085)。VASについては介入前と介入後のROM値で計測した。介入前ROMではMTA介入期が平均5.25改善でホットパック介入期が改善1.25。介入後ROMではMTA介入期が平均2.00改善でホットパック介入期が改善0。FSについては介入前ROMのみ計測を行った。MTA介入期が平均9.50改善、ホットパック介入期が平均0.75改善。介入期間中の新たな疼痛出現や炎症増悪の所見は認められなかった。
【考察】RAの有痛性肩関節にMTAを施行しその即時的効果を検証した。有意差は認められなかったもののMTAがRAの機能訓練を効率よく施行する手段として有効であることが示唆された。有意差が認められなかった原因としては介入回数の少なさが考えられる。
各所見より肩関節運動時痛の主原因としては炎症痛や関節構成体の破綻は除外される。さらに介入期間中の活動性の増悪は認められなかったにも関わらずVASに計測角度での差が認められた。このことは疼痛が活動性によってのみ決定されるのではなく反射性防御性収縮による虚血痛や習慣性誤用による筋筋膜性疼痛なども含め種々の原因が複合的に関与しているためだと推察される。
本研究結果よりRAの疼痛においても原因の精査と治療手技の選択によりセラピストが対応可能であることが示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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