理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 614
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骨・関節系理学療法
リウマチ疾患による足部障害に対する足底板の有効性
栗田 健
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キーワード: リウマチ, 足底板, 10m歩行
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抄録
【はじめに】リウマチの病態は主に関節の炎症の持続と組織の破壊が特徴とされている。荷重部位である足部は歩行時等に負荷がかかるため、骨関節の破壊や変形が認められやすい部位の一つである。リウマチ疾患による関節変形が進行した場合、骨関節アライメント不整や荷重痛などにより、歩行能力が低下することは臨床上多く経験する。当院ではこのような患者に対し、足底板を作成し歩行能力の向上に努めてきた。今回、足底板の作製を既製のパッドでの対応ではなく、入谷式足底板療法中級コース作製方法に準じて行った。個々に合わせ歩行動作を中心に、身体運動のメカニズムや足からの運動連鎖を指標に行った評価を基に足底板を作製した。足底板を使用する前後の比較により治療の効果について調べたので以下に報告する。
【対象と方法】H18.8.18~H19.8.8の間に依頼のあった、リウマチによる足部障害により歩行能力の低下がみられた13症例(男性3名女性10名、平均年齢±標準偏差56.15±12.64歳)を対象とした。全例、事前に本研究の主旨を説明し同意を得た。歩行能力はSteinbrockerのClass分類でClass2が12名、Class3が1名であった。
効果判定は作製した足底板の挿入前と後に自由歩行による10m歩行にて時間及び歩数を測定した。歩行速度及び一歩距離を算出し、対応のあるt検定を用いて比較検定を行った。また前後の結果から改善率(=挿入時/挿入前×100-100)として、それぞれ算出し効果判定を行った。
【結果】挿入前後の歩行速度及び一歩距離について対応のあるt検定により危険率1%でそれぞれ有意な差があるとされた。全症例に正の改善が認められ、その改善率は歩行速度改善率平均値±標準偏差13.47±5.33%、一歩距離改善率平均値±標準偏差10.70±4.81%であった。
【考察】
作製した足底板は生理的なアーチを保持することが目的ではなく、身体運動時の障害を力学的観点から作製した為、形状はすべて異なる形状であった。足底板の挿入前後の即時効果について比較をし、足底板を使用した場合10m歩行において歩行速度および一歩距離についてそれぞれ平均で1割程度の改善が認められた。以上より同じ距離を移動した場合、足底板により筋出力を効率よく推進力へ変換する事が可能となったと考えられた。
リウマチ疾患による足部障害に対する足底板の使用は、歩行能力を向上させる一治療手段としての有効性があると考えられた。

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© 2008 日本理学療法士協会
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