理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 911
会議情報

骨・関節系理学療法
MIS-AL法による人工股関節置換術後の早期杖歩行自立者のADL動作獲得時期の検討
加藤 佐季子菅沼 由梨香五十嵐 麻子千葉 哲也松原 正明石井 研史萩尾 慎二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】当院では、人工股関節全置換術に対して2003年より2週間プログラムを施行している。2005年からMIS-AL法を導入し歩行自立日数が短縮されているが、早期に杖歩行を獲得してもADL動作獲得には症例間で差があるような印象をうける。そこで早期杖歩行自立者のADL動作獲得時期を比較し検討した。
【方法】対象は2006年3月~2007年3月までにMIS-AL法を施行した78股のうち2週間プログラムを達成し、かつ術後9日以内に杖歩行自立となった50股とした。当院では、杖歩行400m自立及び階段昇降、靴下、床上・正座の各ADL動作が全て自立となった日を退院可能日としている。退院可能日が10日未満の群(以下、早期群)17股と10日以上14日以内の群(以下、通常群)33股に分けた。検討項目は、術前・術直後・術後1週の股関節可動域検査及び荷重能力、術前・術後1週の等尺性股関節外転筋力(HOGGAN社製HEALTH INDUSTORISE INC)及び等尺性膝関節伸展筋力(MINATO社製COMBIT CB-2)と筋力の改善率(術後1週/術前)、杖歩行開始日、杖歩行、階段昇降、靴下、床上・正座動作自立日とした。統計学的解析は、Mann-WhitneyのU検定を用い有意水準を5%未満とした。
【結果】術側股関節外転筋力は、術前が早期群1.06Nm/kg、通常群0.78Nm/kg、術後1週が早期群0.92Nm/kg、通常群0.59Nm/kgであり、術前・術後1週共に早期群で有意に高かった。外転筋力改善率では有意差は認められなかった。ADL動作では杖歩行開始日が早期群2.23日、通常群3.66日、杖歩行自立日が早期群5.70日、通常群7.27日、階段昇降が早期群7.41日、通常群9.84日と早期群が有意に早かった。その他の検討項目では有意差は認められなかった。なおADL動作の獲得は杖歩行自立、靴下、床上・正座、階段昇降の順であった。
【考察】全ADL動作中、両群共に階段昇降獲得が最も遅く、退院可能日は階段昇降獲得の影響をうけると考えられた。さらに階段昇降は早期群で有意に早く、術前・術後1週の術側外転筋力は早期群で有意に高いが、外転筋力改善率では有意差が認められなかった点から術前の術側外転筋力が重要であると示された。また当院の先行研究では、早期歩行自立に影響する因子として術前JOAスコア、術前の股関節外転筋力及び膝伸展筋力が強いことが挙げられている。従って、術前の股関節外転筋力は早期歩行自立だけでなく階段昇降獲得にも影響すると考えられ術前より外転筋力を強化することで早期退院可能日の獲得が可能となり得ると考えられた。
【まとめ】階段昇降獲得が、退院可能日を規定する因子と考えられた。さらに術前の股関節外転筋力は早期杖歩行自立だけでなく、階段昇降獲得にも重要な因子であると考えられた。
著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top