痛みと痒みは互いに相反する感覚として知られているが,中枢神経系における痛みと痒みの相互作用における神経機構についてはまだあまり分かっていない.我々は視床下部に存在するオレキシン産生神経(オレキシン神経)の痒みの制御における役割について研究を進めており,その最新の研究成果について報告する.オレキシン神経欠損(ORX-abl)マウスでは,痒み刺激による引っ掻き行動が有意に抑制される一方で痛み刺激に対する逃避行動が増強することが明らかとなった.よってオレキシン神経は,痛みは抑制する一方で痒みは促進させるという,2つの感覚を逆方向に制御している神経であることが示唆される.