理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 932
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骨・関節系理学療法
下腿骨折後の跛行に対する運動連鎖的アプローチ
距骨下関節におけるヒラメ筋・後脛骨筋の筋活動
染川 典子山口 泰成中島 三智世伊藤 智一
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キーワード: 跛行, 距骨下関節, CKC exercise
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抄録
【はじめに】
跛行改善のためには、運動連鎖・筋の収縮形態を考慮したexerciseを選択する必要がある。今回、全荷重開始後に跛行が残存していた下腿骨折の症例に対し、距骨下関節におけるヒラメ筋・後脛骨筋の筋活動に注目してCKC exerciseを行ったところ、跛行の改善が得られたので報告する。
【症例紹介】
32歳女性 診断名:左脛腓骨骨折 2007年3月11日、ショートスキーにて転倒受傷。3月15日髄内釘固定術施行。翌16日より左膝関節・足関節ROM練習、非荷重での筋力強化開始。5月14日より1/6PWB開始。2週上がりで2/3PWBまで荷重量を上げ、同年7月31日横止めスクリュー抜去。翌8月1日よりFWB開始。8月20日より独歩可能となった。尚、発表に関しては説明と同意を得ている。
【治療経過】
8月20日評価時、歩行観察では左のInitial Contact(以下IC)で膝関節伸展が不足し、股関節内旋がみられた。Loading Response(以下LR)では股関節内旋の継続、Mid stance(以下Mst)~Terminal stanceで距骨下関節(以下ST)回内・体幹左側屈がみられた。MStでは左足関節内果後方の疼痛あり(VAS 5)。Mobilityは左膝蓋骨上方・内側へのすべり、距骨後方すべり低下。MMTは左前脛骨筋・後脛骨筋・足趾屈筋3、下腿三頭筋2+。これに対し膝蓋骨上方・内側、距骨後方へのmobilizationの他、ハーフスクワット・カーフレイズ・立位での後脛骨筋強化を週3回実施。10月31日評価時、左LRでの股関節内旋、MstでのST回内・体幹左側屈が軽減。内果後方の疼痛軽減(VAS 1)。Mobilityは左膝蓋骨上方・内側へのすべり改善。MMTは左前脛骨筋・後脛骨筋・足趾屈筋4、下腿三頭筋3となった。
【考察】
本症例ではMstで左ST回内が認められ、左足関節内果後方の荷重時痛がみられた。正常歩行ではMstで、後脛骨筋・ヒラメ筋の活動によりSTが回外し足部の安定性が得られる。これに対し、歩行時の運動連鎖を考慮した後脛骨筋・ヒラメ筋の荷重下での筋力強化を行った。その結果として、ST回内が軽減しMstでの内果後方の疼痛が改善。同時に、脛骨が外旋し、股関節内旋が軽減されることで荷重下肢の安定性が得られ、跛行が改善したと考えられる。このように、跛行を改善させるためには、歩行中の運動連鎖・筋の収縮形態に注目し、exerciseの選択をしていくことが重要だと考えられる。
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© 2008 日本理学療法士協会
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