理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 951
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骨・関節系理学療法
大腿骨頚部骨折地域連携パス導入前後における治療成績の比較
荒木 美穂大阪 裕藤沢 美由紀岡本 典子阿部 泰昌
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抄録
【目的】
平成18年6月より倉敷圏域では大腿骨頸部骨折・転子部骨折に対する地域連携パス(以下パス)の運用を開始した。急性期病院から回復期病院へ術後7~14日での転院を目標にしており、倉敷圏域では、1つの急性期病院に対して、21病院が転院先として機能している。当院は転院先の1つである。今回、当院でのパス導入前後における治療成績の比較検討を行った。
【対象・方法】
対象は平成17年7月~平成19年6月までの2年間に大腿骨頸部骨折、転子部骨折を受傷し骨頭置換術、観血的骨接合術を施行し当院へ転入院した計54例のうちバリアンス2例を除いた52例。バリアンスは、死亡した場合、入院日数が180日以上経過した場合である。内訳は、パス導入前(以下パス前)男性6例、女性20例、平均年齢は78.2±13.7歳、パス導入後(以下パス後)男性4例、女性22例、平均年齢は77.1±12.9歳。頚部骨折はパス前後とも15例、転子部骨折はパス前後とも11例。骨頭置換術はパス前12例、パス後5例、観血的骨接合術はパス前14例、パス後21例。手術から当院転院までの日数、手術から当院退院までの日数、当院の在院日数、FIM改善率、歩行獲得率、転帰先、在宅復帰率、主な合併疾患について比較した。なお、歩行獲得率は退院時日常生活で主な移動手段が歩行を用いたものであり、もともと歩行困難であった場合は除いた。在宅復帰率には施設から入院し施設に退院したものも含めた。統計学的検討は、t検定を用い5%未満を有意水準とした。
【結果】
手術から当院転院までの平均日数はパス前22.3±7.1日、パス後14.3±6.9日、両群間に有意差(p<0.01)を認めた。手術から当院退院までの平均日数はパス前92±31.1日、パス後76.9±30.9日、平均在院日数はパス前71.7±28.5日、パス後63.7±29.9日と短縮傾向にあったが有意差は認めなかった。FIM改善率、歩行獲得率、転帰先、在宅復帰率の項目については両群間に有意差は認めなかった。主な合併疾患は、脳梗塞(麻痺あり)パス前3例、パス後4例、認知症パス前12例、パス後8例、糖尿病パス前5例、パス後4例、高血圧パス前7例、パス後6例であった。
【考察】
今回の調査から、パス後、治療成績には大きな変化がなかったが平均在院日数は短縮する傾向にあり、パス運用の実績が得られていると考えられた。手術から当院退院までの日数、在院日数に有意差を認めなかった理由としては、合併疾患の多発性脳梗塞により嚥下障害を呈し、その治療が必要であった場合や、転帰先の決定に難渋した場合などにより、予定より長い入院期間を要する例があったためと考えられる。回復期を担う我々の役割は、それぞれの個別性を重視した治療が求められていることが示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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