理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 963
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骨・関節系理学療法
スポーツ傷害予防に対する取り組みの意識調査
高橋 能久福嶋 照夫松田 弘彦
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抄録

【はじめに】当院は平成17年5月より、某私立高校サッカー部に対して本学会の第42回で報告した「かかりつけ医」としての活動を行っている。これまでの活動によりスポーツ傷害予防に対する取り組みがどの程度定着したか、またその意識を調査したのでここに報告する。

【対象】対象は某私立高校サッカー部員45名(1年生15名、2年生14名、3年生16名)である。

【方法】アンケートにて、対象がスポーツ傷害予防に対する取り組みを行っているかを調査した。取り組みを行っている選手(以下取り組みあり)と取り組みを行っていない選手(以下取り組みなし)の2群に分け、その意識の差がどこにあるか調査した。統計学的分析はt検定及びx2検定を行い5%未満を有意水準とした。

【結果】回答者は45名(回収率100%)であった。取り組みあり群は全体の56%であった。学年別の割合は1年生47%、2年生43%、3年生75%であった(有意差なし)。「ケガ(=サッカーによるスポーツ傷害)の経験」は、取り組みあり群:100%、取り組みなし群:80%であった(p<0.05)。「ケガ後不安を感じた選手」は、取り組みあり群:72%。取り組みなし群:30%であった(p<0.01)。「傷害予防には誰が主体なって取り組むべきか?」との問いに対し、取り組みあり群は、A.専門の人に任せる:12%、B.監督に任せる:0%、C.自分で取り組む(専門の人に聞きながら・自分で勉強して):88%であった。取り組みなし群はA.35%、B.0%、C.65%であった(p<0.05)。その他2群間で「ケガの程度」や「ケガした時の原因(偶然・相手がいたから・環境のせい・自己管理不足)」・「サッカー経験年数」などとの関係も調べたが有意差はなかった。

【考察】取り組みを行っている選手の傾向として、サッカーによるスポーツ傷害を経験した選手、特に競技復帰までに不安を感じた経験のある選手ほど取り組みを行っているようである、スポーツ傷害を経験した選手の例を出し、競技復帰までの大変さを印象付けることも必要かと感じた。主体性を持って取り組む選手が増えたことは良い事だと思う。取り組みなし群の中にも自分で取り組む意思のある選手がいるので、具体的な方法を指導し対応していきたい。また有意差はなかったが、ケガの原因で自己管理不足と答える選手も数名おり、ケガへの反省ができ次につなげる事が出来れば良いように思えた。しかし、偶然と思っている選手が回答の中で多く、それで済ませてしまうと次に気を付ける事をしないような印象を受ける。なぜケガをしたのか理解させる必要性も感じた。取り組みを行っている選手が全体の56%であるという結果は予想より低く、傷害予防を定着させる活動としてメディカルチェックや講義などを中心に行ってきたが、残念ながらまだ十分でないようである。今回の結果を踏まえ対応を考えていきたいと思う。

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© 2008 日本理学療法士協会
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