理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 989
会議情報

骨・関節系理学療法
腰椎椎間板ヘルニア患者における姿勢と疼痛について
時津 直子尾崎 恵美今井 陽子佐藤 和幸田中 藍子小木曽 有喜林 直子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】腰椎椎間板ヘルニア(以下LDH)の患者は、疼痛逃避や筋力低下により、不良姿勢を呈していることが多い。手術後はLDHによる疼痛は減少するが、不良姿勢の継続により、疼痛・LDHの再発するリスクは高くなる。そのため、術後早期のリハビリにおいて、姿勢の再教育をすることが重要であると考える。そこで今回、姿勢と疼痛に、どのような関連があるかを検証した。
【方法】LDHと診断され、MEDを施行した10例を対象に実施した。評価は術後のリハビリ開始時に初期評価を、退院前に最終評価を行った。測定内容は、立位姿勢(矢状面・前額面)をデジタルカメラで撮影し、疼痛はVASを、運動機能は日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(以下JOAスコア)、FFD、片脚立位バランスを使用し、評価した。また、退院後の経過は、ホームエクササイズの実施状況、生活状況、疼痛の有無について調査した。治療内容は腰背部リラクゼーション、ローカルマッスルの再教育、及び下肢の筋力強化運動を行った。これらの治療には、NORDISK TERAPI 社製Terapi Master Systemを使用した。また、ADL動作における姿勢調整についても、指導を行った。
【結果】初期評価では、正常姿勢から逸脱した不良姿勢を呈し、明らかな疼痛と運動機能の低下が認められた。最終評価では初期評価と比較し、疼痛の軽減、運動機能の向上とともに、不良姿勢の改善がみられた。また、退院後の調査結果では、症状に多少ばらつきがみられたが、運動機能は比較的維持していた。
【考察】LDHは長時間の不良姿勢や、過剰労働、加齢、肥満に起因することが多い。そのため、術後に疼痛の軽減、ADL改善が認められても、不良姿勢への再教育がされていなければ、LDHを再発する可能性があると考えた。近年、姿勢に関して、正常姿勢を保持するためには、ローカルマッスルの働きが重要であると報告されている。また、腰痛患者では反射抑制・疼痛抑制によりローカルマッスル収縮不全に陥っていることが多いといわれている。今回、結果として不良姿勢の改善が認められたのは、治療において、腰背部のリラクゼーションと同時に、ローカルマッスルへ刺激を与えたことで、コアスタビリティーが得られたためと考える。また、姿勢の改善により、退院後の予後についても良好であったと示唆された。以上のことから、疼痛と姿勢に関連があることが分かった。
【まとめ】LDH手術後の患者に対し、姿勢に焦点をあて、治療を行った結果、姿勢、疼痛、運動機能の改善が得られた。よって、疼痛を軽減するためには、姿勢再教育は有効であることが示唆された。今後、データ数を増やし、姿勢の検討と傾向を調査していきたい。
著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top