抄録
【はじめに】昨年までの本学会において、脱出型腰椎椎間板ヘルニア(以下 ヘルニア)の自然吸収過程における前額面・矢状面からの静的形態評価を報告した。今回は、保存療法pain control期におけるX-P動態撮影から保存療法有効例と抵抗例の腰仙椎可動性の傾向を調査し、ヘルニアの自然吸収過程における理学療法の方向性について考察した。
【対象】平成16年4月から平成17年11月までの脱出型腰椎椎間板ヘルニア患者でX-P動態像が撮影された20例(男性13例 女性7例 年齢44.2±12.0歳)を対象とした。椎間高位はL3/4 1例、L4/5 9例、L5/S1 10例であった。ヘルニアのタイプはsubligamentus extrusion 12例、transligamentus extrusion 6例、sequestrasion 2例であった。横断面局在分類は正中型4例、傍正中型16例であった。明らかな不安定性を有する症例・多椎間のヘルニア・外側型ヘルニアは対象から除外した。
【方法】各症例のX-P動態撮影における前後屈時の腰椎前弯角(以下 LLA)と仙骨傾斜角(以下SIA)を計測し、保存療法有効群(A群10例)と保存療法抵抗群(B群10例)の2群間において比較検討した。LLAはL1-L5上縁をcobb法、SIAはFerguson法に準じ、富士通社製Graphic Viewer Dr.Ableにて計測した。
【結果】LLA・SIAとも前屈可動範囲・後屈可動範囲・全可動範囲すべてにおいて2群間に有意差を認めなかった。後屈可動域はLLA A群26.09°B群21.41°SIA A群28.22°B群26.69°であり、後屈条件下でのアライメント調和度(LLA/SIA)A群1.02±0.02 B群0.71±0.14において2群間に有意差(p<0.025)を認めた。
【考察】今回は、腰仙椎レベルの可動性がpain control期の理学療法に必要なのかどうかを調査した。L5/S1症例が多いことによる選択バイアスは否めないが、後屈条件下での調和度において有意差を認め、静的立位の調和係数0.8との関係はA群>0.8>B群であった。A群には後屈時に仙骨傾斜角の減少に伴う腰椎前弯角の増大を示す傾向があり、腰椎前弯の可動性に加え、腰仙椎レベルの動きを補償する骨盤傾斜の重要性が推察された。B群ではkemp sign陽性で、痛みなどのために伸展運動が困難である例が多かった。保存療法pain control期の理学療法では除痛肢位への誘導のみではなく、根性疼痛が出現しない範囲における骨盤・股関節を含めた可動バランスを補償させる方向でのアプローチが必要性であることが推察される。今後も、さらなるヘルニアの保存療法の方向性について検討していく必要がある。