理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 999
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骨・関節系理学療法
投球障害の発生状況における調査
当院における肘,肩関節に障害を有した野球選手を通して
島岡 秀奉安次富 満秋下川 龍太藤本 弘昭甲藤 周子森澤 豊
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抄録

【目的】近年、スポーツ障害の予防を目的としたメディカルチェックが行われ、その報告も増えつつある。なかでも野球選手を対象とした報告は多く、肘、肩に投球障害を有する選手が問題とされる。そこで今回、我々は当院を受診した野球選手のうち肘および肩に投球障害を有した患者の発生状況について調査した。
【方法】対象は平成19年4月~10月までに当院のスポーツ整形外科外来に受診した投球障害のうち肘、肩の障害を認めた51名(平均年齢14.7歳±2.6 10~22歳)である。調査項目は.発症から受診までの期間、既往歴、疼痛の発生する投球相、ポジション、指導者からの指摘・指導の有無(投球フォームに関して)の5項目に関して問診を行い、肘および肩の障害別にその傾向を調査した。
【結果】肘の障害を認めた者は26名で平均年齢は14.0±2.6歳、肩の障害は25名で平均年齢は15.4±2.6歳で肘の障害が低年齢であった。症状出現から受診までの期間は全体で、1週間以内の者が24%、1ヶ月以内32%、3ヶ月以内14%、6ヶ月以内16%で、1年以上の者が14%であった。既往歴では、肘の障害の者の53%、肩の障害の者では、36%に過去に疼痛の発生もしくは受診歴があった。疼痛の出現する投球相は、肘の障害において加速期~フォロースルー期に92.3%、肩の障害においては、早期コッキング期~加速期に73%の者が疼痛を認めた。ポジションでは、肘の障害の者において投手31%、捕手19%、内野手27%、外野手23%、肩の障害の者では、投手28%、捕手4%、内野手16%、外野手52%と全体をとして投手より野手(特に外野手)の選手に投球障害が多かった。投球フォームに関する指導者から指摘の有無については、肘の障害の者で72%、肩の障害で69%の者が、投球フォームに関して過去に指摘もしくは指導を受けていた。
【考察】今回の対象者の平均年齢からその主たる要因は未熟な組織への過負荷と、投球のメカニカルストレスであると考えられ、既往や受診までの期間から、全般に慢性化している症例が多い。またポジションにより要求されるパフォーマンスが若干異なるため、メカニカルストレスに違いがあると推察される。さらに肘、肩に最も過負荷を受ける投手よりも、他の野手の障害が今回の調査では多くみられた。これには投手のオーバーユースに関する予防的対策が浸透してきていると考えるが、一方でさらに包括的な対応の必要性が示唆される。また指導者より投球フォームに関する指導、指摘をすでに受けているものが多く、非合理的なフォームによるメカニカルストレスの増加が予測される。すなわち、疼痛がない選手でも指導者より指摘されている選手は投球障害を引き起こす可能性が高く、メディカルチェックを行う必要性が示唆される。

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© 2008 日本理学療法士協会
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