理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1001
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骨・関節系理学療法
少年軟式野球選手におけるメディカルチェック事業の報告と課題
小学5年生以下に着目して
田中 康雄遠藤 剛山本 良一岡邨 直人関根 裕之山本 智章
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抄録

【はじめに】今回、徳島県で行なわれている少年野球検診をモデルにして小学5年生以下の少年野球選手を対象としたメディカルチェックを実施した。そこで今回は問診の結果を中心に報告し、今後のメディカルチェックへの展望・課題について検討した。

【対象と内容】対象は少年軟式野球大会に参加した48チームの小学生521名(5年生364名、4年生127名、3年生27名、2年生3名)で、事前に問診票を配布、疼痛の有無、ポジション等について解答してもらった。有症状者と投手、捕手を対象に大会会場で一次検診を行った。一次検診では肘・肩関節の可動域、圧痛、ストレス痛についてチェックした。二次検診では一次検診の結果から対象者を絞り医療機関の受診をすすめ、医師の診察、理学療法士による評価・治療を行うことを予定している。

【結果】事前の問診票の結果から身体に疼痛を訴えている選手は271名(5年生205名、4年生57名、3年生9名)で全体の52.0%であり、その中で医療機関を受診しているのは5.5%(15名)であった。複数回答による疼痛部位は肩関節103件、肘関節106件、腰部17件、膝関節40件、足部・足関節91件、踵50件、その他45件であった。また疼痛部位が単独の選手は146名、複数の部位を訴える選手が125名であった。一次検診の対象者を316名に絞り220名(69.6%)を実施した。

【考察】今回の結果で身体に疼痛を訴えた選手は52.0%と全体の半数以上であり、その中で医療機関を受診している選手は5.5%に過ぎなかった。小学5年生以下と野球暦が少ないにも関わらず疼痛を有する者が多い結果となった。また現状では疼痛を有していても医療対応をしているケースは極めて少ないことがわかった。慢性化し重症化する可能性も否定できず、より早期から障害予防に取り組む必要性がある。また疼痛を訴えた部位をみると上肢209件,下肢181件とほぼ同数であり、複数部位の痛みを訴えている者も多い結果となった。野球という競技特性から肘・肩といった投球障害を考えがちであるが実際は全身に障害が多く、下肢を含めた全身のチェックをしていくことが重要である。 今後の展望として一次検診の結果の検討、二次検診の受診状況の把握、小学生から中高生を対象とした追跡調査を実施し、障害予防の体制を確立していきたい。

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© 2008 日本理学療法士協会
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