理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1358
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骨・関節系理学療法
小児のACL帯損傷に対しACL再建術を行った一例
加来 敬宏川瀬 啓介酒井 啓之藤田 晃史
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抄録

【はじめに】
前十字靭帯(以下ACL)損傷は、スポーツ外傷の中でも発生頻度が高い疾患であり、その多くがACL再建術とリハビリテーションを必要とする。術後後療法において近年、安全なリハビリテーションの方法が報告されているが、骨端線が閉鎖していない状態での再建術後の後療法に関して報告は少ない。今回我々は骨成長時期である10歳女児のACL再建術後のリハビリテーションを経験したので報告する。

【症例紹介】
10歳女児。2007年4月30日落下事故により受傷。他院にてMRI撮影しACL損傷と診断され当院へ紹介された。スポーツは、空手と水泳をレクレーションレベルで行っている。

【術後経過】
2007年6月19日ACL再建術施行。翌20日より理学療法開始2週間の完全免荷後、2007年7月4日より4分の1荷重歩行開始。以後、約2週間の間隔で徐々に荷重量が増え同年8月21日(術後9週)に全荷重となった。ROM訓練は2007年7月4日(術後2週)より膝関節屈曲運動開始し、同年7月11日(術後3週)より膝関節伸展運動開始となった。

【考察】
今回の手術方法は、関節鏡視下にて行われ、骨端部内で骨孔を作成しエンドボタンとスクリューにて再建靭帯を固定した。当院では、一般的に早期の荷重、早期のROM獲得を目標にしたスケジュールに沿ってACL再建術後リハビリテーションを実施している。しかし、本症例においては、骨孔にkiller turnが存在し再建靭帯の固定力も弱いことがわかっていたため、荷重ならびに膝関節伸展方向のROM訓練には注意が必要であった。リハビリテーション場面では、術後2週間は松葉杖訓練および足趾、足関節の自動運動のみとし、術後腫脹と疼痛のコントロールに注意して行った。ROM訓練・荷重訓練開始の指示が出てからは再建靭帯への過度のストレスを回避するべく、訓練中はもちろんのこと日常生活動作(以下ADL)指導に力を入れ、患児ならびに家族に動作指導を行った。対象が小児であるがゆえ、治療訓練場面でのリスク管理のみならず、病棟看護師と協力し合い、病棟の生活場面での良肢位保持・危険動作の回避などリスク管理にも注意を要した。また、単調な運動の繰り返しにならないよう遊びの要素を加え、さらに機能訓練が長時間に及ばないよう、一日のリハビリテーションを数回にわけ、運動継続のモチベーションが維持できるよう考慮した。

【まとめ】
今回、10歳の女児に対するACL再建術後のリハビリテーションを経験した。術後のリスク管理において、チーム医療は欠かせず、患者・家族・病棟スタッフを含めて動作指導チェックが必要であると考える。ACL再建術の後療法において、再建靭帯に安全な機能訓練方法が研究・報告される中、筆者自身ADL指導が疎かになりがちであった。本症例を経験し後療法におけるADL指導が、その重要な位置にあることを再認識した。

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© 2008 日本理学療法士協会
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