理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1359
会議情報

骨・関節系理学療法
自家膝屈筋腱を用いた解剖学的2ルート前十字靱帯再建術の臨床成績
多数例における検討
田邉 芳恵信太 雅洋福田 修近藤 英司安田 和則
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】 膝前十字靱帯(ACL)損傷に対する術後療法は、改良を重ね安定した成績が得られている。しかしACL損傷に対しては手術的治療が最も重要であり、再建方法にも改良が重ねられてきた。共同演者の安田らはACL再建術に関する基礎研究に基づいて解剖学的2ルートACL再建術を開発し、前向き比較臨床研究においてこの術式が膝前方不安定性に関して従来の1ルート再建術よりも有意に優れていることを報告した(日整会2003)。演者らは第38回および第40回本学会において、解剖学的2ルート再建術に対して従来の1ルート再建術と同様の術後プロトコールを処方し、その1年成績が従来の再建術のそれよりも良好であったことを報告した。しかし、この研究における各群の症例数は24例であり、この成績が大きな母集団においても維持されるか否かが不明のまま残されていた。本発表の目的はこの検証を行うことである。
【方法】 症例は片側ACL単独損傷に対して鏡視下解剖学的2ルート再建術を行った109例である。そのうち術後1年時のデータが揃った90例(男性52例、女性38例)、平均年齢27歳(13~57歳)を本研究の対象とした。手術は熟練した1人の術者が異なる4施設において行い、前内側線維束には4本、後外側線維束には2本の腱を組み込んだ膝屈筋腱―ハイブリッド材料を移植した。2本の移植材料には膝軽度屈曲位にて総計60~80 Nの初期張力をかけ、大腿骨側はEndobutton、脛骨側は2本のStapleで固定した。術後プロトコールは初期の24例に用いた内容と同一のものを全例に対して行った。その内容は手術翌日より屈曲30°で固定する膝装具を装着し1/2荷重を許可した。膝伸展他動運動は術翌日から、屈曲他動運動は15日目から開始した。手術後2週目から全荷重歩行を許可し、4週で装具の角度制限を除去した。装具は術後3ヶ月間装着した。4ヶ月でジョッギングを開始し、9ヶ月でスポーツ復帰を許可した。術後評価には、KT-2000 arthrometer、等速度性筋力、膝関節可動域、Lysholm score、IKDC基準を用いた。
【結果】 膝関節30度屈曲位での膝前方不安定性の対健側差の平均は、1.2±1.8 mmであった。この値は以前に報告した初期の24例の成績と比べて有意差を認めなかった。等速度性筋力の対健側値比の平均は、大腿四頭筋力が90%および膝屈筋力が95%であった。可動域では2例に約10度の伸展制限を認めた。Lysholm scoreは平均97点であった。IKDC基準ではAが53例、Bが34例、およびCが3例であった。各施設間の臨床成績に有意差はなかった。
【考察】 初期の少数の症例において獲得された良好な臨床成績は、その後の多数の症例においても施設とは関係なく獲得されていた。本術式は有用な術式である可能性が高いと考えられた。また全例に対して用いた術後プロトコールは、鏡視下解剖学的2ルート再建術において安全に処方できる内容であると考えられた。
著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top