理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1441
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骨・関節系理学療法
加工靴下による歩行時評価
前岡 浩福本 貴彦庄 健二安藤 俊生三浦 秀展庄本 康治森岡 周
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抄録
【目的】
テーピングの効果は関節の制動であり,損傷した関節の安定性を高める。加えて,足関節捻挫ではテーピングにより練習や試合での発生率が50%低下したとの報告もあり,障害予防において有効性も述べられている。しかし,テーピングには解剖学的・運動学的知識が必要な事,その巻き方には熟練を要するなど実施には問題がある。その他,テーピングの使用頻度によるコスト面の問題や粘着剤による皮膚への影響も指摘されている。そこで,スポーツ場面に限らず,日常生活での足関節捻挫の予防という観点からテーピングの効果が容易に得られる方法を検討し,その手段として日常生活で頻繁に使用される靴下に着目した。
今回は,外返し方向への誘導目的に製作された加工靴下を使用し,裸足およびテーピング歩行とともに足関節角度における影響を比較検証したので報告する。
【方法】
被験者は本学の学生である健常成人6名(平均年齢19.3±1.9歳)とし,各被験者には本研究について説明し,文書にて同意を得た。
歩行は裸足,テーピング,加工靴下での歩行を各々3回ずつ実施し,歩行速度は任意とした。測定には電気角度計(Biometrics社Flexible GonioMeter System)を左足関節外側に貼付し,矢状面・前額面の足関節角度を計測した。また,同時に床反力計(ANIMA社製MA8000,サンプリング周波数100Hz)を同期させた。これらの装置から,足関節底屈・背屈・内反・外反角度と床反力の鉛直・前後・左右成分の最大値,最小値を抽出し,平均値を算出した。
統計処理には一元配置分散分析を用い,有意差があったものはRyan法により多重比較を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
床反力の計測では,裸足と加工靴下歩行における鉛直成分の最小値で有意に低く(p=0.004),左右成分の最大値で有意に増加(p=0.010)した。また電気角度計の結果では,裸足に対し,足関節外反角度は加工靴下(p=0.009),テーピング(p=0.009)ともに有意に増加していた。
【考察】
今回,電気角度計での結果から,裸足歩行に対し,テーピングでの効果と同様に加工靴下においても外反し方向への誘導の効果が認められた。また,床反力計における加工靴下は鉛直成分で低下,左右成分では増加が認められ,この原因として,被験者の訴えでも認められたが,床反力計のプレート上を歩行する際の靴下による滑りが原因と思われる。このことから,屋内の靴下歩行に関し,滑り止めの必要性を改めて確認した。
今後の課題として,今回の加工靴下は20代前半の健常成人には効果が認められたが,中・高齢者を対象とした影響を検証する必要もあると考える。
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© 2008 日本理学療法士協会
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