抄録
【目的】体幹の安定を保つ筋として腹横筋が近年注目されている。この腹横筋は上中下部の3つに分類可能で、その活動も異なることが最近指摘されている。しかし、その違いを具体的な動作で検証した研究はまだ少ない。今回リフティング動作で荷物を上げる場合と下ろす場合腹横筋の上部線維と中部線維とで活動に違いがあるか超音波画像診断装置を用いて検証した。また従来超音波診断装置による撮像は静止、ないし静止に準じた状態でなされていたが今回はプローブに工夫をすることでリフティング動作過程の撮像を試みてみた。
【方法】対象者は健常男性11名、平均年齢23.3±3.53歳 身長170.5±4.57cm 体重65.4±5.59kgであった体幹を直立位にして荷物を持ち上げ下ろす。その間の腹横筋の状態を超音波画像診断装置(東芝PV8000)で撮像する。荷物の重さは0kg、10kg、15kgとする。体幹に超音波診断装置のプローブを固定し腹横筋の活動を撮像した。持ち上げる際は呼吸を止めて行った。持ち上げるスピードは2~3秒で統一した。撮像する順番等は無作為とした。撮像した映像は画像編集ソフト(WinDVD)で最大筋厚の時点で静止画像化し、その後画像解析ソフト(imageJ)で筋厚を測定する。検定方法は、0kgから重量増加に伴う筋厚の増加を算出し、上中部線維内の荷物の持ち上げ、下ろし動作の差を比較した。差の比較には対応のあるt検定を用いた。
【結果】平均では中部線維の筋厚は荷物を上げる(以下0,10,15kg の順に記載12.46±3.3 mm 7、14.18±4.96 mm,13.82±6.06mm)より下ろす方(12.62±4.21,13.08±5.41,13.53±5.17mm)がほぼ薄くなる。上部線維は荷物を下ろす動作の方(14.17±3.17 mm,15.73±3.96 mm,17.33±3.95mm)が持ち上げる動作(13.75±3.32 mm,15.73±2.92 mm,15.85±3.15mm)より筋厚が増加する傾向である。しかし、上部線維と中部線維とも持ち上げ動作、下ろし動作との間には統計上有意な差は確認できなかった。
【考察】予測では荷物を持ち上げる動作は重心が高く不安定な姿勢になる。これに対して下ろす動作は重心が低く安定している。姿勢安定のため持ち上げ動作では腹横筋主要部分の中部線維が活発になるが、下ろし動作では不安定な上部体幹の安定のため上部線維が強く働くと考えた。結果は上部、中部線維ともに上げ下ろしで働きに違いは認められず、下ろし動作の際にも腹横筋が全体として働いている。これは、荷物の下ろし動作の際、脊柱起立筋等の伸展筋と腹直筋等の屈曲筋が過度に活動すると腰椎に過度な圧力が生じ腰椎を傷害する惧れがあるため腹横筋が全体として働き姿勢の安定を図ったものと考える。
【まとめ】今回の研究ではリフティング動作による上部線維と中部線維とでは働きの差をを確認できなかった。リフティング動作で行った場合腹横筋の筋厚に変化はなく全体的に働くことで体幹の安定性を確保していると考える。