理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 373
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内部障害系理学療法
冠動脈バイパス術後の肺拡散能はV(dot)E/V(dot)CO2 slopeと関係する
飯田 有輝山田 純生伊藤 武久上田 有紀佐藤 友紀山崎 武則石田 英樹
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抄録
【目的】運動時の息切れは、冠動脈バイパス術(CABG)後回復早期の患者でよくみられる。運動時息切れには、運動時の分時換気量(V(dot)E)の亢進が関連し、その背景にはV(dot)CO2、PaCO2、死腔換気率(VD/VT)、換気効率の指標であるV(dot)E/V(dot)CO2 slopeなどの要因がある。一方、CABG後に、手術の影響でうっ血による肺拡散能(DLCO)の低下や肺胞換気血流比の不均等が発生し、その回復には一定時間を要することが知られている。しかし、CABG後のV(dot)Eの亢進にDLCOの低下が関連するかは知られていない。本研究は、手術後の換気亢進とDLCOの関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は当院にて待機的にCABGを受けた患者で、体外循環を用いて胸骨正中切開術を行った20名(男性17名 女性3名 年齢63.2±1.27歳)とした。術前からの呼吸器疾患、中枢神経障害、骨・関節障害などの整形外科疾患は除外した。方法は、術前に肺機能検査、術後10日で500m歩行が可能になった時点で、肺機能検査と心肺運動負荷試験(CPX)を実施した。測定項目は、肺機能検査では肺活量(VC)、一秒量(FEV1)、DLCO、肺胞換気量(VA)、機能的残気量(FRC)、Closing Capacity(CC)、CPXでは、V(dot)E、V(dot)CO2、VD/VTおよびPETCO2とし、得られた測定値とV(dot)E/V(dot)CO2 slopeの関連性について検討した。統計処理は、術前後の指標の比較にはWilcoxonの符号付順位和検定を用い、各指標との関係にはSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。また、本研究は当院倫理委員会の承認を受け、全症例に対し手術前に十分な説明をし、書面にて参加に同意を得た。
【結果】手術前値に対し術後は、DLCO、VC、FEV1は有意に低下していたが、VA、FRC、CCに有意な変化はみられなかった。V(dot)E/V(dot)CO2 slopeとは、RC pointにおけるPETCO2(r=-0.496)ならびに術後DLCO(r=-0.458)に有意な負の相関を認めたが、VD/VTとは有意な相関は認められなかった(r=0.405 p=0.077)。またDLCOはVD/VTと有意な相関がみられた(r=-0.470)。
【考察】V(dot)E/V(dot)CO2 slopeはRC pointのPETCO2と関連し、VD/VTとは関連する傾向にあることから、術後回復早期の換気亢進には、CO2感受性亢進および死腔換気の増加が関連するものと思われた。またV(dot)E/V(dot)CO2 slopeは術後DLCOとも関連したが、術後のDLCO低下はVA低下を伴わなかったことより、肺胞の血流低下による肺胞換気血流比の不均等が示唆された。以上よりCABG後の換気亢進には、CABG特有の機序としてCO2感受性亢進および死腔換気の増加、DLCOの低下が関連することが示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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