理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 777
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内部障害系理学療法
食道癌根治術における胸部操作の相違と術後の運動耐容能について
垣添 慎二末原 伸泰
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抄録
【目的】
食道癌根治術における胸部操作では従来からの開胸に加え侵襲の軽減を目的に胸腔鏡補助下での手術が施行されている。 食道癌根治術における術後合併症に関する報告は散見するが術後の運動耐容能の回復率についての報告は少ない。 今回当院で食道癌根治術が施行され、開胸での胸部操作と胸腔鏡での胸部操作が施行された症例において術後の運動耐容能の回復ついて検討したので報告する。

【対象】
2004年4月から2007年4月までに当院にて食道癌根治術が施行された51例のうち、周術期にステロイド剤、好中球エラスターゼ阻害剤が使用された33例を対象とした。 対象の33例を開胸による胸部操作が施行された14例(開胸群)、と胸腔鏡が施行された19例(胸腔鏡群)の2群に分け比較検討した。 胸部操作以外の術式、抜管日、他の周術期管理は同一であった。 両群とも全例術前(呼吸訓練、起居動作訓練)、術後翌日から退院前日(呼吸訓練、排痰、歩行訓練・エルゴメータ)まで理学療法を実施した。

【方法】
運動耐容能の指標として6分間歩行テスト(6MWT)を使用した。 両群とも術前と術後2週目に6MWTを測定しその回復率と、術後の歩行開始日を比較検討した。 統計処理は二元配置分散分析及びTukey法を用い、危険率5%未満をもって有意とした。

【結果】
両群における患者背景において胸腔鏡群は術時間が有意に長く(p<0.01)、出血量も多い傾向にあった。 歩行開始日は開胸群では3.6±0.7日、胸腔鏡群では3.7±0.6日、 運動耐容能の回復率は開胸群83.2±6.4%、胸腔鏡群80.2±4.6%でともに有意差は生じなかった。

【考察】
食道癌根治術における胸部操作の相違で術後の運動耐容能に有意差は生じなかった。 今回の報告では胸腔鏡群は胸腔鏡導入直後により手技が安定しておらず、術時間が長く出血量も多い傾向にあり低侵襲ではなかった。 その結果が両群の運動耐容能に差が生じなか一要因であった事が示唆される。
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© 2008 日本理学療法士協会
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