抄録
【はじめに】
左心補助人工心臓(以下LVAS)は、末期重症心不全に対して心臓移植までのブリッジとして、また最近では、自己心機能の回復を目指したつなぎとしての使用も報告されている。日本においては慢性的なドナー不足の状況が持続しており、移植待機期間あるいはLVAS装着期間も長期に及ぶ症例が多い。今回、当院において長期LVAS装着患者に対する心臓リハビリテーション(以下心リハ)を経験したため報告する。
【症例紹介】
[症例1]56歳男性 急性心筋梗塞に対してドール手術、冠動脈バイパス術、僧帽弁形成術を施行後低心拍出症候群となりLVAS装着目的にて当院転院。H16.4、LVAS(東洋紡社製国循型VAS)装着術施行(入院時心エコー:LVDd/s=62/55mm LVEF=22%)。術後1ヶ月より個別理学療法開始 H17.11より自転車エルゴメーターを利用しての運動療法開始。開始時の心肺運動負荷試験(以下CPX): PeakV(dot)O2=10.6ml/kg/min,O2pulse4.9ml/beat。H18.4~集団での心リハ参加。週3~5回程度で有酸素運動、レジスタンストレーニングを心電図モニター、医師の監視下において実施した。心リハ開始後1年のCPXではPeak V(dot)O2=20.1ml/kg/min,O2pulse8.6ml/beatと運動耐容能の著明な改善を認めており、心機能についてもLVDd/s=47/33mm,LVEF=58%と改善している。合併症の出現もなくLVAS管理下で現在心リハ継続中である。
[症例2]22歳男性 拡張型心筋症による重症心不全に対してH17.5、LVAS(東洋紡社製国循型VAS)装着術施行(入院時心エコー:LVDd/s=76/72mm,LVEF=11%)術後5日目より理学療法開始。H18.4~集団での心リハに参加した。開始後6ヶ月のCPXではPeakV(dot)O2=29.2ml/kg/min,O2pulse9.5ml/beat,心エコーではLVDd/s=53/43mm,LVEF=43%と改善を認め、合併症の出現なくLVAS管理下での心リハ継続中である。
【考察】
東洋紡社製VASは短期使用を想定して作成されたものであり、LVAS管理下での活動範囲は病室内に限られてしまうのが現状である。その中でいかにdeconditioningを予防・改善させ、QOLの改善につなげるかが重要な課題である。今回適切なリスク管理の下で行うことで、LVAS装着患者でも安全に理学療法を実施し効果を得ることができた。近年、LVASからの離脱の報告もあり、より積極的な理学療法の介入が必要であると考えられた。