理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1219
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内部障害系理学療法
一般病院における終末期がん患者に対するリハビリテーション
自宅退院に向けて
久原 聡志竹村 仁安藤 真次
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抄録

【はじめに】
終末期がん患者のリハビリテーションは、がん治療と同時期から、患者が最後まで精一杯「生きぬける」ように援助することで、ADLの向上はもとより、患者・家族が心ひとつにして大切な時間を過ごせるように、時間と空間を提供することも目的とされる。今回、終末期がん患者に対し、自宅退院を目的とした理学療法を行ったので報告する。
【方法】
理学療法プログラムは、全身的運動療法(離床、筋力維持・増強練習、起立・歩行練習、自転車エルゴメータ)、環境設定が中心で、vital signとBorg Scaleによって負荷量を調整し、必要に応じて退院前訪問指導を行った。介入前後にQOLの指標としてEuroQOL(EQ-5D)、全身状態の指標であるPalliative Performance Status(PPS)を測定した。
【症例紹介】
[症例1]84歳、女性。総胆管癌による閉塞性黄疸に対して経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD)施行。1ヶ月後内瘻化し、メタリックステント留置され、PTCD抜去。入院から約4ヶ月後、リハビリ目的にて当院入院。余命1ヶ月程度との説明を主治医が家族に行った。理学療法開始時所見はEQ-5D視覚評価表:0、PPS:40%であった。全身的運動療法および環境設定を行った結果、癌自体の進行による痛みの出現はみられたものの、ADLはほぼ自立レベルとなった。退院時EQ-5D視覚評価表:80、PPS:70%と向上し、自宅退院となった。
[症例2]63歳、女性。左乳癌骨転移による左大腿骨骨折により当院入院。骨折部位は骨破壊が進行しており、易骨折とされ保存的に加療となる。当初リハビリは医師の判断で適応外とされていたが、約2ヶ月後ベッド上ADL改善のために看護師の依頼にてリハビリ開始。開始時EQ-5D視覚評価表:5、PPS:30%であった。左下肢完全免荷であったため上肢エルゴメータを使用した全身的運動療法や環境設定、本人・他職種を交えた病状説明を行った上で、退院前訪問指導を行い、自宅での身の回りの動作自立レベルに至った。退院時EQ-5D視覚評価表:55、PPS:60%と向上し、自宅退院となった。
【結果及び考察】
多くのがん患者が病院で最期を迎えるわが国で、終末期医療の担い手は一般病院の医療者である。また、治療成績の向上により、“がんが不治の病であった時代”から“がんと共存する時代”へと変遷してきた。その中で患者はどんなに弱っても自分で座りたい、歩きたい、トイレは最後まで使いたいなどの希望を持っている。2症例とも自宅退院の希望が強かったものの、長期臥床によるDeconditioningの影響や、改善困難な機能障害から著しいADL・QOL低下をきたしており、リハビリ開始前はベッド上生活を余儀なくされると考えられていた。家族とともに過ごせる自宅への退院が可能となった要因としては、他職種との連携や個々の身体状況にあった運動療法や環境設定・退院前訪問指導を行える理学療法士の役割が重要であった。

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© 2008 日本理学療法士協会
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