抄録
【はじめに】確実に進行する慢性呼吸不全において抑うつや不安は呼吸困難を増悪させ、不活動や社会的孤立をもたらし悪循環を形成する。そのため呼吸リハビリテーションスタッフが、運動療法の継続・維持につとめ、患者モチベーション向上への介入や、心理的サポートを行うことは重要である。(エビデンスC)三重県内における施設内容、理学療法士の勤務状況等の実情に対応可能で、簡便・有効・他施設間において相互比較可能の条件を満たす三重県内共通呼吸リハビリテーション評価表(MRE) を作成し5総合病院で試用しており、精神評価としてHADを採用している。
【目的】呼吸リハビリテーションを行なうことによって変化する精神状態状況を検討する。
【期間・対象】期間:平成19年4月~10月 対象:三重県内MRE(三重呼吸リハ評価マニュアル)を施行している県内5病院における呼吸リハ指導慢性呼吸不全症例51例(平均年齢 71±8.78歳)
【方法】HADうつスケール結果と身体状況、運動耐用能として6MWTにおける歩行距離、息切れの指標としてMRCスケール、ボルグスケール、SpO2、さらにSF-8を調査し、呼吸リハビリテーション指導による効果を指導前後の差において相関を評価した。統計方法はピアソンの相関係数の検定を行った。
【結果】対象症例の呼吸リハビリ開始前の精神状態は不安40%、抑うつ50%と約半数の症例が不安定な状態にあり、1ヶ月の呼吸リハ指導では変化が認められなかった。しかし、HADうつスケール結果と身体状況、運動耐用能として6MWTにおける歩行距離、息切れの指標としてMRCスケール、ボルグスケール、SpO2、SF-8の相関を行ったところ、不安は年齢、SpO2、Borg、MRC、NRADL、RP、BP、GH、SF、RE、MH、PCS、MCSに相関し、抑うつはVC%、Borg、MRC、NRADL、SF、RE、MH、MCSと相関を示した。
【考察】今回、1ヶ月の呼吸リハビリテーション指導では不安抑うつともに改善はみられなかったが、この原因としては、多施設で指導内容の統一がなされておらず、また病状自体が安定していない症例が含まれていたことが考えられた。HADにおける不安はSF-8における身体指標と、抑うつは精神指標と相関し、息切れの改善は不安、抑うつの両方を改善した。今後継続的に評価を行い呼吸リハビリ指導を行なうことで精神機能面の改善をはかり報告していく。