理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 297
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生活環境支援系理学療法
電動車椅子にNPPVを搭載することにより自操が可能となった一症例
脊髄性進行性筋萎縮症の患者に対するアプローチ
徳間 由美川上 司桐山 剛並木 亮北村 由季
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抄録
【はじめに】
電動車椅子は筋ジストロフィーをはじめとする筋萎縮を呈する患者にとって重要な移動手段である。筋萎縮を呈する疾患では、病気の進行に伴い呼吸不全を来たすことがあり、人工呼吸器が必要となる。TPPVを搭載した電動車椅子やNPPVを搭載した介助型車椅子の報告は多くあるが、NPPVを搭載した電動車椅子の報告は少ない。今回、脊髄性進行性筋萎縮症(以下SPMA)により呼吸不全を呈し、離床困難となった症例に対し、電動車椅子にNPPVを搭載することで自操が可能となったので以下に報告する。
【症例紹介】
49歳男性。昭和52年にSPMAの診断を受ける。平成15年肺炎のため当院に入院となり、平成16年から電動車椅子で移動していた。平成18年6月から肺炎を繰り返し、呼吸不全となり、NPPVを使用している。マスクはコンフォートジェルマスクとオプティライフマスクを併用している。現在は、1日に約20時間使用しており、背臥位で4時間はウィニングできている。座位では、呼吸筋力の低下により呼吸補助筋による呼吸とSpO2の低下が見られ、呼吸苦の訴えが強かった。そのため、平成19年7月からは車椅子自操ができない状態であった。上肢の筋力はMMTで肩・肘・手関節周囲は1~2、手指は3であり、電動車椅子のスティックの操作は可能であった。
【方法】
症例の電動車椅子(IMASEN EMC700/710)にNPPV(BiPAP Synchrony)を搭載するため、搭載台を設置することとした。台はNPPVと外部バッテリーが搭載できる最小の大きさとし、リクライニングの角度を妨げないよう後下方に設置した。また、自操時の視界を考慮してオプティライフマスクを選択した。看護師立ち合いの下、台にNPPVと外部バッテリーを搭載し、電動車椅子の背もたれを可能な限り後方へ倒した状態で車椅子乗車を行った。NPPVを装着し、マスクフィッティングをした後、SpO2モニターで変化を観察した。表情や訴え、SpO2に注意しながら背もたれを起こし、自操可能である85°まで起こした後、自操を試みた。
【結果および考察】
電動車椅子にNPPVを搭載することにより、安楽な呼吸状態で自操することが可能となった。また、オプティライフマスクを使用することで、視界を遮ることがなく安全に自操できた。現在は、週3回、約1時間の乗車ができており、平成19年11月には外出が可能となった。自操中に一度だけマスクが外れたことがあり、マスクを固定するベルトが緩かったことが原因であった。近くにスタッフがいたため、大事に至らなかったが、この様な事が起きる危険がある。これを防止するために乗車前のマスクフィッテングが重要であると考える。以前は車椅子自操に消極的だったが、現在は意欲的になった。電動車椅子の自操が可能になったことが、QOLの向上につながったと考える。
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© 2008 日本理学療法士協会
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