理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 306
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生活環境支援系理学療法
介護保険対象者における特殊寝台の利用実態
藤井 智山崎 哲司鈴木 基恵
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キーワード: 特殊寝台, 生活, 実態調査
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抄録
【目的】
特殊寝台は寝返り、起き上がり等の起居動作を支援するもので、介護保険により急速に利用が進んだ福祉用具である。しかしながら、起居動作以外の生活活動への活用についての調査は少ない。今回、在宅での特殊寝台上の生活活動についての利用実態調査を行い、特殊寝台の活用の留意点を考察したので報告する。
【対象および方法】
当センターの在宅サービス対象者のうち、介護保険により特殊寝台を利用し、調査に同意した93名を対象とした。調査期間は2006年9月~11月である。対象者の内訳は、男性52名、女性41名である。調査の方法は、自宅に訪問しての本人や介護者に対するヒヤリングとした。調査項目は、特殊寝台を用いての生活活動内容(食事、排泄、更衣、整容、清拭、テレビ・ラジオ視聴、読書、趣味、電話、団欒、昼寝など)とそれに要する時間、住環境、特殊寝台周辺の身の回り品目等である。
【結果】
夜間の就寝以外に特殊寝台を利用しているものは90名(97%)であった。このうち、夜間の就寝以外に2時間以上特殊寝台を利用している者は68名(64%)を占めていた。特殊寝台を用いた生活活動の内容のうち主な項目は、テレビ・ラジオの視聴が65件(70%)、更衣65件(70%)で起床・就寝前後の場合もあり、次いで昼寝55件(59%)であった。また、要介護度が3以上の者は、要介護度2以下の者に比較して、排泄、団欒を目的に利用している割合が高かった。特殊寝台が設置されている部屋の大きさは、平均7畳程度で、特殊寝台のある居住階にリビングがある人では、特殊寝台での活動時間が短い傾向にあった。身の回り品目は、ティッシュペーパー、テレビ・エアコン・照明器具のリモコン、時計、眼鏡、タオル等であった。特殊寝台上で、本人が使用するものは、臥位でも座位でも配置は変わらず、介護者だけが使うものはテーブルなどに配置される傾向にあった。
【考察およびまとめ】
特殊寝台は、夜間の就寝以外にも生活活動に利用されていることがほとんどであった。その中で多かったテレビ・ラジオの視聴や更衣は、就寝前後に行われる生活活動であり、特殊寝台導入においては、単に起居動作についての指導にとどまらず、特殊寝台上の臥位や座位などの姿勢保持と、起床に合わせた動作であるなど、生活活動の連続性を踏まえての動作指導が重要と思われた。また、ティッシュペーパーやリモコンなどは、起居動作や他の生活活動の妨げにならず、且つ使用しやすく配置される必要がある。居住階にリビングなどくつろげるスペースがないと、特殊寝台上での時間が長くなる傾向があり、離床を促す視点から、家の中での活動範囲が期待できない場合は、外出活動を踏まえたケアプランを作成することが必要だと思われた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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