理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 314
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生活環境支援系理学療法
特定高齢者の介護予防教室実践報告
今村 厚美白石 成明松浦 聖岡本 結華山下 智香大橋 文隆村瀬 典子井波 緑
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抄録
【はじめに】平成18年4月介護保険制度の改正により、生活機能の低下を防止することに重点をおいた介護サービスが創設された。そのひとつとして地域支援事業特定高齢者把握事業がある。この事業は、老人保健法における65歳以上の基本健康診査に生活機能評価を追加し、生活機能低下の恐れのある人をスクリーニングし、介護予防事業への参加を促すものである。
三重県四日市市においては、この特定高齢者の介護予防事業を市内3カ所に設立した地域包括支援センターが実施している。今回はその中のひとつ、四日市市中地域包括支援センターにて、特定高齢者として運動器の機能向上プログラムに参加した人の教室参加の前後での変化について若干の知見を得たので報告する。

【対象】対象は、中地域包括支援センターの担当する地域内に在住の人で特定高齢者と診断された34人、そのうち途中で参加をやめた人、教室参加の意志を最初は示していたが参加しなかった人を除き、教室前後で評価を行えた26人(男3人、女23人 平均年齢79.6±5.4歳)を対象とした。

【方法】教室は、理学療法士・看護師が担当し(1時間)、内容は各個人に合せて、ストレッチや筋力増強訓練、ボールなどを使いレクレーション的要素も取り入れた。平成18年12月から開始し、期間は原則3ヶ月、月2回、最寄りの公的な施設で行い、各自宅まで送迎を行った。参加人数は1教室平均4.0人、評価は、教室前後に握力、開眼片足立ち、5m歩行(歩数)、チェックリストを行った。検定は対応のあるt検定を用い、有意水準を0.05とした。

【結果】握力の教室前後の平均値は19.5±7.4Kg,19.6±6.1Kgで有意差みられず、開眼片足立ちの前後は7.3±8.3秒、9.7±1.0秒と有意に改善がみられた。また、歩行機能では5m歩行前後は8.4±2.6秒、6.6±1.7秒と有意な改善がみられ、同様に歩数でも14.5±2.9歩、12.3±2.1歩と有意な改善がみられた。さらに、チェックリスト25項目中、運動機能に関係する問6~10で、教室前後の回答に良好な変化が、26人中16人みられた。

【考察】課題として対象者34人中8人が結果的に脱落し、教室開始期間を通して、脱落者を少なくしコンプライアンスを上げる必要がある。今回の結果から、特定高齢者に運動介入することで、要介護者・要支援者の減少につながると考え、また、教室終了後の、活動の場をつくることが重要と考える。また、今回は1教室当たりの人数が少なく個別の運動メニューの提供が可能であった事も良好な結果が得られた要因と考えられた。
平成19年度より、特定高齢者の選定基準が見直され、かなりの人数増加が見込まれるため、特定高齢者施策のみならず一般の高齢者施策を考え直す必要がある。


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© 2008 日本理学療法士協会
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