理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 313
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生活環境支援系理学療法
介護予防に対する当院外来での取り組み
中本 千映子
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抄録
【はじめに】平成18年4月に改定された介護保健制度により介護予防を目的とした対策が講じられている。各自治体や施設などでも様々な取り組みがなされており、当院でも一部の外来患者を対象とし、転倒・介護予防を目的とした評価・運動介入を試みている。今回、現時点での取り組みについてまとめ今後の課題について考察したので述べる。
【対象】平成18年9月から平成19年10月まで当院外来にて、運動器リハビリテーションセラピスト介入の運動器リハビリテーション2(以下、運動器2)・消炎鎮痛処置を受けた症例計42名(男性16名、女性26名:平均年齢80.0歳)。いずれもHDS-R21/30点以上で認知症の疑いがないもの。原疾患は変形性腰椎症、変形性膝関節症が多くを占めていた。
【方法】下肢筋力・バランス機能の指標とされる開眼片脚立位、Time Up & Go(TUG)を月1回の計画評価算定時に測定。この際、結果に応じて片脚立ち練習・膝伸展運動・立ち上がり運動を説明し自宅で行うよう促す。運動器2の症例に関しては、これ以外に原疾患の治療としてPTの評価に基づいた運動を運動器リハビリテーションセラピスト指導のもと1~2回/週施行する。
【結果】対象者を1)消鎮・継続なし群(16名)、2)消鎮・継続あり群(14名)、3)運動器2群(12名)にわけ、開眼片脚立位、TUGの初回、6ヵ月後の平均結果を以下に示す。A.開眼片脚立位(右/左):1)9.95/10.34→9.65/8.71、2)9.21/10.20→19.49/20.35、3)6.83/10.77→12.71/13.36秒。B.TUG:1)11.33→10.37、2)10.08→9.39、3)13.36→11.97秒。
【考察】今回、原疾患に対する治療が目的である外来患者への試験的な運動介入となったため、介護予防への理解が十分でない症例が多く、これにより、運動継続がなされなかった1)群では開眼片足立位に改善が見られなかった。これに対し、必要性を感じ運動継続を行えた2)、3)群では延長傾向を示したと推察する。またTUGにおいても、全ての群で短縮傾向を示したが、特に個別の運動内容を立案した3)群にて改善傾向を認めたと考える。これらから、目的意識の確立と動機付け、運動内容の個別性、定期的な介入の必要性が伺えた。今回の結果を踏まえ、運動器不安定症としての治療介入・個別運動の充実、体操教室などの開催による他者との共有と介護予防に対する意識付けについての検討が今後の課題として挙げられた。
【おわりに】介護予防に関しての当院での取り組みについてまとめ、今後の課題について考察した。原疾患の治療以外の目的に対する介入という制約への策を考案し、一人でも多くへの運動継続を促し、介護予防へのきっかけとなることが望まれる。
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© 2008 日本理学療法士協会
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