理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 751
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生活環境支援系理学療法
地域在住高齢者の身体能力とライフスタイルの関係
中野 善之小森 昌彦
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抄録

【はじめに】高齢者が住み慣れた地域で健康的な生活を維持するためには、移動能力を中心とした活動性の維持を図ることが必要だと考えられる。地域で生活する場合、周囲の環境(車や人の往来、路面状況など)を瞬時に判断、反応できる能力(敏捷性)が必要で、その能力があれば自信を持って行動でき、活動性が高いと仮説を立てた。しかし、先行研究では地域高齢者の活動性と敏捷性を関連付けた研究はほとんどない。そこで、今回は地域の高齢者を対象に敏捷性も含めた身体能力と活動性(ライフスタイル)との関係について調べた。
【対象者】65歳以上の高齢者97名(男性25名、女性72名、平均年齢75.4±5.9歳)で、本研究の趣旨を口頭および文書にて説明し、本人の同意を得た。
【方法】1.身体能力の測定:身体能力として、股関節外転筋力、側方最大一歩幅、Timed Up and Go test(以下:TUG)、敏捷性の指標である10ステップテスト(以下:TST)、5m最速歩行時間(以下:最速5m歩行)を実施した。2.ライフスタイルに関する質問:芳賀が作成した22項目を用いた。「よくする」「たまにする」「ほとんどしない」の3段階のいずれに該当するか回答を求め、「よくする」を「する」、「たまにする」「ほとんどしない」を「しない」として2群に分けた。各項目の身体能力の2群間の差についてt検定を用い、5%未満を有意水準とした。
【結果】「地区の世話役をしますか」「趣味を持っていますか」「ボランティアをしていますか」「仕事・畑仕事をしていますか」「新しい挑戦をしますか」「明るい考えをしていますか」「定期的に運動をしていますか」の7項目で「する」人が「しない」人に比べてTSTが有意に良好であった。その7項目のうち、TUGで5項目、側方最大一歩幅、最速5m歩行で4項目、股関節外転筋力でも1項目が「する」人が有意に良好であった。
【考察】地区の世話役や趣味、ボランティア、仕事(畑仕事含む)といった社会活動は継続して身体を動かしたり、荷物を持ったり、さまざまな路面状況に対応する歩行能力や体力、より高度なバランス能力が要求される。小野らは、高齢者では若年者に比べて運動方向をすばやく切り替える反応、指定された速度に合わせた重心移動能力が低下していたと述べている。よって地区の世話役や趣味、ボランティア、仕事(畑仕事含む)といった社会活動を維持するためには、TSTやTUGや最速5m歩行のような運動方向の切り替え、すばやい重心制御能力の維持が必要と考えられる。年齢や筋力は、ほとんどのライフスタイル項目で有意差がなかった。これは、対象者の多くがライフスタイルを維持するための最低限の筋力はあったためと考えられる。したがって、高齢者が住みなれた地域でライフスタイルを維持するには筋力を維持しつつ、敏捷性を中心としたすばやい重心移動能力を維持する介入が必要と考えた。今後は、適切な介入プログラムを検討する必要がある。

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© 2008 日本理学療法士協会
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