理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 754
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生活環境支援系理学療法
地域在住高齢者における身体活動量と身体機能との関連
喜多 崇致金ヶ江 光生松藤 晶子志岐 哲也釜崎 敏彦水上 諭太田 大作渡辺 進
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抄録

【目的】先進国では急速に高齢者人口が増加し、我が国でも2015年には65歳以上の高齢者の割合が全国平均で25%を超えると推計されている。しかし、地方では高齢者の割合が既に40%近くに達している所もあり、身体活動の1つとして農作業や漁業などを継続している高齢者が多い。そこで我々は、地域在住高齢者の1日当たりの活動量と筋力・バランス能力・歩行移動能力などの身体機能との関連について検討することとした。
【対象・方法】対象は、本研究に対し同意が得られた、当医院外来患者及び当院デイケアの利用者、男性21名( 80.2±5.3歳)、女性71名(79.2±5.0歳)であった。方法は、自記式質問紙を用いて、年齢、性別、身長・体重(BMI算出)、日常の身体活動量(Sallis et al,1985)、痛みの数、主観的健康感、過去1年の転倒暦、転倒恐怖感について質問した。身体機能については、握力、片足立ち時間、Timed Up and Go(以下TUG)、5m歩行時間について調査した。身体活動量の中央値をcut off 値とし、40.0kcal/kg/day未満を低活動群(52名)、40.0kcal/kg/day以上を高活動群(48名)の2群に分類し比較検討した。2群間比較については、Mann-whitneyのU検定及びχ2検定を用いた。身体活動量を対象としたcut off値の検討にはROC曲線を用いた。統計解析には、SPSSver11.5を用い、5%未満を有意水準とした。
【結果】1) 年齢を低活動群と高活動群の2群で比較したところ、低活動群80.6(±5.5) 歳・高活動群78.4(±4.3)歳と低活動群が有意に高かった。2) 片足立ち時間を同様に2群で比較したところ、低活動群4.93(±6.50)秒・高活動群10.63(±18.29)秒と低活動群が有意に短かった。3) TUGを同様に2群で比較したところ、低活動群15.0(±5.13)秒・高活動群13.13(±5.37)秒と低活動群が有意に遅かった。4) 5m歩行時間を同様に2群で比較したところ、低活動群7.17(±2.70)秒・高活動群6.04(±2.86)秒と低活動群が有意に遅かった。5) 痛みの数、主観的健康感、過去1年の転倒歴、転倒恐怖感については有意な差は認められなかった。
【考察】生理的な老化、つまり加齢により身体活動量・筋力などの身体機能は衰えるとの報告がある一方、習慣的な身体活動(習慣的な運動)の維持・継続は、身体機能の維持(機能の低下予防)あるいは身体機能の増大につながるとの報告がある。今回の結果は、先行研究同様に、加齢は身体活動量に影響を及ぼす1要因と考えられる。また、身体活動量の違いは、片足立ち時間(バランス能力)、TUG及び5m歩行時間(歩行移動能力)に影響を与えることが示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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