理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 753
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生活環境支援系理学療法
在宅高齢者の生活活動量を規定する要因(第2報)
伊藤 滋唯森島 健大津 昌弘青木 いづみ西田 恭子池田 恵吉澤 隆治黒川 健次郎小鷹 順子渡辺 栄子南波 知春
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抄録

【目的】我々は第35回理学療法学術大会において、61名の高齢者を対象にした生活活動量を低下させる規定要因の調査結果を報告した。その結果、生活活動量を規定する要因として、Body Mass Index(以下BMI)、握力、年齢、拡大ADLの4項目が抽出されたことを報告した。今回我々は、高齢者専用住宅に住む高齢者を対象に、規定要因の再考を行うことを目的に調査を実施した。調査項目に若干の変更を加えたことにより、新たな知見を得たので報告する。

【方法】ケアハウスに住む者で研究の主旨説明を行い、協力を得られた28名(男性8名、女性20名:平均年齢77.6歳±5.6歳)を対象とした。調査期間は、平成16年11月21日から平成19年3月25日の間の任意の一日とした。調査項目は、年齢・BMI・握力・膝伸展力・歩行能力・ファンクショナルリーチ(以下FR)・長座位体前屈・生活活動量の8項目とした。1日の生活活動量は、人間の活動を臥位・座位・立位・歩行の4つに大別し、各姿勢における行動を運動強度の順に各々5段階(非常に弱い・弱い・中等度・やや強い・強い)に分け、合計20の行動に分類し調査するタイムスタディ法から求めた。握力はデジタルタイプの握力計(竹井機器社製)を用い立位にて測定した。膝伸展力はμタス(アニマ社製)を用い端座位にて等尺性筋収縮力を測定した。握力及び膝伸展力ともに、左右2回ずつ測定し最大値を採用した。歩行能力は、16mの歩行路を用い、中央10mでの歩行速度を測定した。杖・装具など日常使用しているものを用い、本人の最大の速さにて歩行し、2回のうちの最速値を採用した。FR・長座位体前屈は測定器(酒井医療社製)を用い、2回のうちの最大値を採用した。統計処理は生活活動量を目的変数とし上記7項目を説明変数とした重回帰分析を行った(p<0.05)。

【結果及び考察】重回帰分析の結果、重相関係数0.709、寄与率0.503の値が得られた。回帰係数の結果より、BMIが生活活動量に有意な影響を示す結果となった。また、有意ではなかったが握力も生活活動量に関与する傾向が認められた。今回の研究では、筋力・バランス・柔軟性・移動能力など身体能力を中心に調査を実施した。しかし身体活動量を規定する一番の要因がBMIとなった。身体活動量を規定する要因として、機能面ではなく身体構造の要因が一番に示唆されたことは興味深い結果である。高齢者の生活活動量の低下が、寝たきりの要因となり、その予防として医療や保健・福祉施設で理学療法士が関わり、治療・訓練・指導を行っている。今回の結果により、機能面のみならず、身体構造面を考慮したプログラムの必要性が示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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