理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 759
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生活環境支援系理学療法
当院でのDisuseに対する短期集中リハの効果と実態
Barthel Indexを用いた検討
榎本 陽介松谷 実菊池 隼強瀬 敏正齊藤 理恵塚田 陽一荻野 雅史野内 宏之
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抄録

【はじめに】
平成18年度の医療保険改定により医療保険下でのリハビリテーション(以下リハ)実施期間に制限が設けられ、期間外となった患者のリハはその大部分が介護保険に委ねられている。しかし、介護保険下でのリハを適切に受けられず、DisuseからADL能力低下をきたした患者が増加している様に思われる。そうした背景から当院ではDisuseの患者を受け入れ、短期集中リハを実施している。その結果、当院における短期集中リハの効果が実際にBarthel Index(以下BI)で確認された。このことを受けBIの詳細な項目に目を向け、当院での短期集中リハの効果や実態を追求した。
【方法】
当院で外来通院している患者で、平成19年5月1日から10月31日にDisuseと診断され入院し、リハオーダーされた14名(男性2名・女性12名、年齢76.9±5.8歳)を対象とした。Disuseの診断は担当医の下、本人や家族の主訴からADL能力低下が考えられる患者に対してBIを実施し決定した。短期集中リハの頻度は6回/weekとし、期間は対象者に合わせて1~2週前後とした。また、リハ実施期間や患者・家族Need、予後予測から詳細な終了予測を立てた。リハの内容としては、筋力増強や動作練習を中心に行った。評価は初期・最終時にBIを用いてADLを検査し、各項目で対応のあるt検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした
【結果】
初期から最終で有意に得点の向上を認めた項目は移乗、トイレ、入浴、移動、階段昇降、更衣であった。一方、向上を認めなかった項目は食事、整容、排便自制、排尿自制であった。向上が認められた項目の中で、入浴と階段昇降は初期で対象者14名全員が減点であり、続いて移動が13名と減点が多かった。
【考察】
能力の向上を認めなかった項目は、初期評価の時点で減点が少なかった。食事と整容は主に上肢機能による動作、排便・排尿自制に関しては便意・尿意の調節であり、Disuseによる影響を受けにくい項目であると考えられた。能力の向上を認めた項目の中では、一般に自立されにくいとされる入浴・階段昇降・移動で減点が多く、能力低下をきたしやすく獲得されにくい動作であることが再確認された。短期集中リハでこれらの項目に効果が認められたことから、頻度・期間を含めた内容に大きな誤りが無かったものと考えられた。しかし、Disuseは身体機能のみならず精神機能や口腔機能等、多岐に渡る退行的変化である。そのため、今回の研究で影響が少ないと考えられた項目にも低下する可能性があり、寝たきり状態まで陥る可能性も十分にあると考えられる。
【おわりに】
今回の主な対象はDisuseによってADL能力が軽度低下した患者であったが、実際にはわずかなADL能力の低下で寝たきりや準寝たきりの状態に陥ってしまうケースもあると思われる。今後は医師や他職種との連携を更に図り、そういったケースにも目を向け、より包括的なアプローチをしていく必要がある。

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© 2008 日本理学療法士協会
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