理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1204
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生活環境支援系理学療法
デイケア利用者のTimed Up and Go Testの時間分析
川口 徹後藤 祥子橋本 淳一
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抄録

【目的】Timed Up and Go Test(以下TUG)は運動機能評価の1つとして用いられている。このTUGは、椅子から立ち上がり、3m歩行し、歩行しながら方向転換をし、さらに3m歩行し、椅子へ着座する複合動作であり、本邦においてはバランス尺度として用いられることが多い。今回、これらの複合動作を各動作相に分け、デイケア利用者のTUGの時間分析を行ったので報告する。
【方法】対象は介護老人保健施設のデイケアを利用する歩行可能な62名(男性23名、女性39名、平均年齢76.1±10.2歳、要支援者25名、要介護者37名)であった。TUG遂行時介助を要する者、検者の指示理解が不十分な者は対象から除外した。疾患の内訳は脳血管疾患群26名、整形外科疾患群16名、内科・その他の疾患群20名であった。TUGの時間分析は、Sony社製デジタルビデオカメラを用いて記録した。得られたTUG実施場面の動作区分は、椅子からの立ち上がり(立ち上がり相)、3m前方に置かれた杖まで歩き(歩行相1)、方向転換をし(方向転換相)、椅子まで歩行し(歩行相2)、体の向きを変え、椅子に腰をかける(座り相)の5つの動作単位に分け、各動作単位での所要時間をデジタルビデオカメラのカウンターにて10分の1秒まで計測した。なお、歩行相は歩行相1と歩行相2の合計時間とした。TUGは快適歩行と最速歩行の2種類を計測した。各動作単位での所要時間、TUGに占める各動作単位の所要時間の割合を疾患別、身体機能等による差異について検討した。各動作での割合とTUG所要時間との関係についてはSpearmanの順位相関係数を、疾患別の比較については多重比較検定Tukey-Kramer法を用いて分析した。有意水準を5%未満とした。
【結果】TUG所要時間と歩行相の割合には、快適歩行、最速歩行とも正の相関関係が認められ、座り相の割合では、快適歩行、最速歩行とも負の相関関係が認められた。すなわち、TUG快適歩行、および最速歩行の双方とも、所要時間が長くなればなるほど歩行相の割合が増え、座り相の割合が減少することが示された。TUG快適歩行では、歩行相と方向転換相において、脳血管疾患群、整形外科疾患群、および内科・その他の疾患群の3群間で有意な差があり、どの相も脳血管疾患群、整形外科疾患群、内科・その他の疾患群の順で有意に所要時間が短かった。さらに、TUG最速歩行では、歩行相と方向転換相に加え、座り相においても、3群間で有意な差があり、どの相も脳血管疾患群、整形外科疾患群、内科・その他の疾患群の順で有意に所要時間が短かった。
【考察】TUGの所要時間の長短、および疾患別での群間比較において、立ち上がり相における統計的に有意な差異を示すデータが得られなかった。立ち上がり相は、TUG所要時間に対する割合が最も少なく、そのためにTUG所要時間の長短および疾患別の群間比較において影響が出にくかったと考えられた。

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© 2008 日本理学療法士協会
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