理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1205
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生活環境支援系理学療法
療養型病棟に入院中の虚弱高齢者に対する運動機能改善と自己効力感の関係
石橋 麻里狩野 良太西澤 美貴子竹内 愛北口 嘉隆木村 遥平山 朋子
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抄録

【目的】療養型病棟に入院中の虚弱高齢者は障害が多く、日常生活動作(Activities of Daily Living以下ADL)に介助を必要とする者が多い。安藤(2002)によると高齢者は心理的に脆弱であり、若い世代よりも死や病気に不安を感じているため、疾患発症やADL低下に対し積極的に立ち向かう意欲に乏しい。そこで今回、理学療法を実施する事により運動機能とADLを改善する事で自己効力感が改善し意欲も向上すると考えた。以上より、本研究では本院入院中の患者を対象に理学療法による運動機能改善と自己効力感の関係について検討したので報告する。

【方法】対象は、本院入院中で平行棒内歩行が可能な脳血管疾患、整形外科疾患の患者19人のうち評価が最後まで可能であった14人(男性2人、女性12人、平均年齢79.6±9.3歳)である。方法は調査期間を2007年3月~8月の6ヶ月間とし、評価項目は運動機能テスト(握力、平行棒内歩行速度、10m歩行器歩行速度、脚上げ検査、落下棒テスト、1分間足踏みテスト、椅子座位体前屈、開眼片脚立位)を1ヶ月に1回測定し、ADLテストとして機能的自立度評価法(以下FIM)と自己効力感尺度(浦上1992)を2ヶ月に1回測定した。統計的手法はT検定を用い、危険率5%を有意とした。本研究は、藍野大学・研究倫理委員会の承認を得て行った。

【結果】運動機能テストでは、10m歩行器歩行速度のみ開始時と最終時で有意な改善がみられた(p<0.05)。しかし、握力、平行棒内歩行速度、脚上げ検査、落下棒テスト、1分間足踏みテスト、椅子座位体前屈、開眼片脚立位では有意差はみられなかった。FIMと自己効力感は、開始時と最終時で有意差はみられなかった。10m歩行器歩行速度の変化と自己効力感の変化に相関関係は認められなかった。

【考察】10m歩行器歩行速度は有意な歩行速度の改善がみられたが、自己効力感は有意差がみられなかった。また、両者の変化に相関関係は認められなかった。Bandura(1977)によると自己効力感とは何らかの行動をきちんと遂行できるかどうかという予期のことであり、自己に対する有能感、信頼感のことをいう。本院は、高齢者が長期療養目的で入院しているため退院という目標が乏しく、何らかの行動をきちんと遂行できるかどうかという予期する将来像を描きにくいと考える。また、10m歩行器歩行速度は改善しても、病棟では移動手段として車椅子を使用しており、「できるADL」と「しているADL」の乖離があり改善度を実感できず、自己に対する有能感を得ることが困難である。以上より運動機能が改善しても自己効力感は有意差がみられず相関関係が認められなかったと考える。内山靖(2004)によると自己効力感が身体活動と関係しており重要とあるが、年齢や社会的背景を考慮する必要が示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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