理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1206
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生活環境支援系理学療法
車いす使用者のVDT作業による二次障害予防のための調査研究(第一報)
在宅でVDT作業を行う脊髄狭窄症者における負担軽減事例
白星 伸一川﨑 浩子垰田 和史辻村 裕次
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抄録

【目的】ITの普及により障害がある人のVDT作業による就労機会が増加している。しかし、その現状は不適切な作業環境により二次障害の危険を含んでいることも多い。そこで、我々は2006年度より車いす使用者のVDT作業改善を目指して複数機関に所属する専門職により調査を行い、改善方法の立案・実施を行ってきた。本稿ではVDT作業環境を改善できた脊髄狭窄症者の事例を紹介するとともに二次障害予防のための支援システム構築に向けた取り組みを報告する。
【対象と方法】対象は脊髄狭窄症者の62歳の男性である。調査・介入期間は2007年2月~10月、調査・介入は医師・人間工学研究者・PT・工学技術者が行った。調査内容は実態調査、介入方法立案と実施、効果判定の3段階に分けて実施した。その内、PTは病歴、生活習慣、関節可動域、筋力、感覚、姿勢、車いすの適合、日常生活活動、体圧分布、表面筋電図検査を行った。
【結果及び考察】〔実態調査〕作業環境:車いす適合では背もたれ部の緩みによる骨盤後傾がみられ腰背部痛の誘因となっていた。また、車いすと画面との距離が長いため頭頸部が前屈し、胸椎部が後彎する傾向にあった。身体機能:ROM-Tでは両肩・肘関節、股関節・膝関節に屈曲制限があり、上位胸椎左凸、下部胸椎・腰椎右凸の側彎があった。筋力はC7領域までは4、それ以下は0~1。感覚はTh4以下に鈍麻があった。日常生活活動は自立。症状:右腕橈骨筋・前腕伸筋群、僧帽筋、三角筋等に硬結が認められた。その他、右腕の疲れ、首の痛み、車いす座位時仙骨部、両下肢痛等があった。〔介入方法の立案と実施〕一次的改善課題として腰背部痛、肩こり、右腕の疲れを挙げた。そこで、車いす座面の張り調整を実施した。調整後、腰背部の痛みが軽減した。さらに、体幹、上腕などの筋緊張を緩和するための運動指導を行った。二次的改善課題としてVDT作業中の座位姿勢の改善を挙げ、PCラックの足台をカットし車いすが奥まで入れるようにした。これは、画面と眼との距離を短くし頭頸部前屈を減少し、後頸部の筋疲労を軽減すること、背もたれを活用し座面にかかる圧を軽減することで腰背部痛の改善を図ることを目的とした。〔効果判定〕介入3週間後に再評価を行った。姿勢・動作分析では胸椎部後彎、頸椎の前屈角度は軽減していた。主観的評価では作業、肩甲帯、頸部の負担感軽減を挙げられた。表面筋電図検査より僧帽筋上部線維の筋活動は変化がなかったが、左脊柱起立筋では筋活動の低下が見られた。座圧計測においても背もたれ部の支持が増加し、荷重分散の効果が見られた。
【まとめ】複数機関に所属する多職種の介入により、広い視点から作業環境を評価することで効果的な介入が可能となった。今後、さらに生活・労働場面での身体負担を軽減した事例を集積し二次障害予防に向けた支援システム構築を目指して行きたい。

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© 2008 日本理学療法士協会
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