抄録
【目的】
デイサービス利用者を対象とした油圧式マシントレーニングの効果を明らかにする。
【方法】
1)対象
デイサービス利用者24名(男性6名、女性18名、平均年齢81.2±7.1歳)を対象とした。介護区分は 要支援2:12名、要介護1:3名、要介護2:8名、要介護4:1名であった。
2)油圧式マシンの筋力測定方法
機器は、ミズノ社製油圧式マシンのダブルニー(膝屈伸運動)、AB/ADヒップ(股関節内外転運動)、バックアブドミナル(体幹屈伸運動)を使用した。測定は利き足を対象とした。各々の運動を10回行った。検査者は運動をできるだけ速く行うよう指示し、運動のタイミングに合わせて声かけをした。10回測定したうちの、最大値を最大筋力(kg)として記録した。
3)分析方法
評価項目は、年齢、性別、介護度、疾患名、各運動項目の最大筋力(膝伸展、膝屈曲、股関節外転、股関節内転、体幹伸展、体幹屈曲)であった。各項目の3ヶ月の変化を検討した。分析ソフトはエクセル統計を用いた。各項目の測定値の変化を関連のあるt検定を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
有意な筋力値の変化が見られた項目は、膝関節伸展・屈曲、股関節外転、体幹屈曲の4項目であった。筋力値の変化は各々、膝関節伸展筋力(kg)で初回9.96±1.17から3ヶ月後11.5±3.4、膝関節屈曲筋力(kg)で初回5.57±1.19から3ヶ月後6.75±1.65、股関節外転筋力(kg)で初回5.42±1.93から3ヶ月後6.29±2.27、体幹屈曲筋力(kg)で初回11.50±4.47から3ヶ月後12.58±4.91となっており、全ての項目につき増加を認めた。
【考察】
これまでの研究では歩行やバランスなどの評価項目に注目したものが多かったが、各関節運動の筋力に注目したものは少なかった。今回、油圧マシンを用いて筋力値の変化を明らかにしたことは新たな知見といえる。トレーニング導入後、膝関節伸展・屈曲、股関節外転、体幹屈曲の筋力値では有意な増加がみられたが、股関節内転、体幹伸展の筋力値については増加の傾向はあるが、統計的に有意な変化ではなかった。全ての項目での有意な変化が見られなかった理由としては症例数が少ないことと、症例中に膝関節疾患、腰部疾患を有するものが含まれており、発揮する筋力値のばらつきが大きいことが考えられる。このことは、同一の訓練で全ての利用者、運動方向への効果をもたらすことの限界を示唆し、利用者それぞれの個別性に合わせたプログラムと合わせて提供することの必要性を示している。
今後、症例を増やすとともに、疾患別の筋力値の変化を見ることで、よりマシントレーニングの効果を明らかにすることができると考える。