理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1664
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生活環境支援系理学療法
障害児の親子を支える草の根的な地域支援の取り組み
鶴見 隆正米津 亮櫻井 好美高木 峰子
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キーワード: 障害児, 地域支援, 地域連携
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抄録
【目的】運動発達遅滞、脳性麻痺などの障害児と母親を中心とするその家族は、児の全身状態の維持と運動発達に関する順調な予後を願う気持ちと不安とを交叉しながら日々の生活を過ごしていることは想像に難しくない。とくに母親の多くは、理学療法士から指導された運動プログラムを炊事、洗濯、掃除などの家事の合間に行い、「ハンドリングはこれでいいのだろうか」、「良くなるのだろうか」と思いつつ、児の摂食・入浴介助などの育児に、そして兄弟の保育園の送り迎えと慌ただしく、精神的にも肉体的にも疲労困憊に陥りやすい状況下である。このような児を含む家族に対する理学療法士の支援としては、どのような取り組みがなされているだろうか。医療機関の理学療法士は、運動機能や日常生活に対して医療的観点で指導、アドバイスが行われているものの、職務上の制約のためか地域を含めた総合的な支援体制は十分とは言い難い状況にある。そこで今回、我々は障害児とその家族を中心とした草の根的な地域支援活動に取り組んできたので、その経緯と活動状況について報告する。

【方法】支援活動の対象地域と児・家族は、半径約15km に亘る3市・1町のエリアに在住している脳性麻痺、染色体異常による精神運動発達遅滞などの児(0歳児から11歳)である。具体的な支援活動は、児の家族らによる自発的な勉強会との連携、地域保健師や行政職員との連携、普通小学校や養護学校との連携を軸にした地域支援を年に4~7回行い、その内容は、育児に関わる相談、運動プログラムに関する指導、介護方法や社会資源の活用相談などである。理学療法士はコーデイネター役を兼ねながら児・家族をはじめ、教育現場にも直接的介入の地域支援を行ってきた。

【結果】草の根的な地域支援の活動としては、育児や運動プログラムに関する個別的な相談・指導が多く、児を中心とした家族関係のあり方や保育園への入園の是非などを、また講演形式では、「安楽な抱き方」「児を取り巻く地域環境のあり方」などについて実技を交えたものを多く実施してきた。学校サイドとの連携では、統合教育における児の障害理解を高める啓発活動を展開したり、地域保健師や行政職員との連携では、継続的な児・家族への地域支援のシステム作りに参画し、親同士のネットワーク、生活支援に努めている。

【考察】地域で生活する障害児・家族に対しては医療的アプローチをコアとしながらも国際生活機能分類ICFを軸にした支援こそが重要である。地域社会の中で日々成長する児、生活を維持する家族に理学療法の観点で、就学前及び就学機関との連携指導や行政システムを交えながら児・家族同士の自律的行動を高めてこそ、児に優しい地域づくりとなると考えている。
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© 2008 日本理学療法士協会
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