理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1666
会議情報

生活環境支援系理学療法
特別支援学校(肢体不自由中心)在校生の障害程度と身体的および社会的機能変化
石川 公久鶴巻 俊江落合 直之江口 清大森 保徳棚井 加代子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】肢体不自由中心の特別支援学校では障害名により生徒を区分する調査が行われている。また全ての特別支援学校で障害重複の有無が調査されている。しかし、それらの調査では障害程度が把握できなかった。そこで我々は、脳性まひの粗大運動能力分類システム(GMFCS)を使用して全校生徒の障害程度を概ね確認した。また、3~4年間の追跡調査が可能であったので推移を併せて報告する。
【対象】茨城県内の肢体不自由を中心とする特別支援学校に通学する児童生徒。全校の調査は2004年~2006年にかけて行った。一部2007年まで追跡調査を実施した。
【方法】身体機能評価および聞き取りによりGMFCSのクラス分類と子どもの能力低下評価法(PEDI)によりセルフケア能力、社会的機能を評価した。脳性まひ以外の疾患に関してもGMFCSを用いて分類した。
【結果】2004年度の調査人数は147名。内訳はレベル1が4名、2が9名、3が27名、4が62名、5が45名であった。2005年度は152名。内訳は1が3名、2が12名、3が30名、4が59名、5が48であった。2006年度は155名。内訳は1が3名、2が15名、3が28名、4が56名、5が53名であった。学年毎で明らかな傾向はなく、近年の重度化傾向もみられなかった。また、GMFCSにより脳性まひおよび頭部外傷の経過を2004年~2007年まで追跡調査すると5から4に改善を認めたものが1名、4から3に改善を認めたものが7名、3から2に改善を認めたものが1名であった。変形や拘縮の程度が増悪するケースはあったが、レベルの低下はみられなかった。改善者の疾患による内訳は頭部外傷後が2名、重度の精神発達障害を重複しているが移動には潜在能力が認められた児が2名、家庭環境に多大な改善がみられた児2名、失調症状が主たる児が1名であった。学年による内訳は小学部低学年が4名、高学年が4名、中学部が1名であった。次にセルフケア能力のみが改善を認めたものが7名、社会的機能のみに改善を認めたものが2名、セルフケア能力と社会的機能双方の改善を認めたものが14名であった。内訳は4が11名、3が8名、2が3名であった。学年では高等部3名、中学部2名、小学部18名であった。
【考察】GMFCSレベル2の割合が上昇を認め、4の割合は低下している。また5の割合は上昇を認める。普通校、他の特別支援学校との関係が考えられるが詳細は不明である。レベル改善を示すケースの割合は6%に満たず、頭部外傷以外では失調症状に改善の可能性が示唆された。また、入学後伸びるとされるセルフケア能力と社会的機能は小学部を中心に改善を認めたが、それ以降の改善は難しいことが判明した。改善者の機能的な内訳は4の改善率が20%、3は27.5%、2は20%と3のケースにより生活能力の改善が期待できることがわかった。

著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top