理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 416
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教育・管理系理学療法
学生の自我変化からみる実習体制の在り方について
東大式エゴグラム(TEG)を用いて
神田 勝利田中 利昭藤本 英明白浜 幸高東海林 麻里子高江 陽子
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抄録

【目的】本校では、2年次に2週間の評価実習、3年次に第1~3期(順に8週・6週・6週)の臨床実習を行っている。実習間の間隔は、評価実習・第1期間は1ヶ月半、第1・2期間は2ヶ月と長く、第2・3期間は2週間と短い。その間、学生においては実習に対する期待や緊張、不安等が混在する。そこで今回、実習を有意義に勧める事を目的に、臨床実習前後に東大式エゴグラム(以下、TEG)を実施し、学生の実習に対する自我変化と今後の実習体制の在り方について検討した。

【方法】対象は平成18年度理学療法学科3年35名(男性20名、女性15名:平均年齢22.7歳)で、評価実習と第1~3期の各実習成績を優は5点、良は4点、可は3点、要検討は2点、不可は1点と点数化し、今回は全学生のうち平均値3.7より下位の者16名とした。方法は(1)臨床実習前、(2)評価実習~第1期終了後、(3)第2~3期終了後、TEGの特性から6ヶ月空けて計3回実施し、TEG検査用紙(項目60問)を用いて学生には事前に説明・同意を得て実施した。そこで、TEG5尺度(CP:批判的親、NP:養育的親、A:成人、FC:自由な子、AC:従順な子)について、実習に対して経時的変化を対応のあるt検定を用いて検討した。

【結果】成績下位の学生は成績上位の学生よりFC値は低く、AC値は高い傾向にある。今回、(2)と(3)のAC平均値は(2)13.8、(3)11.5であり、P=0.016と有意差(P<0.05)を認め、その他の項目については有意差は認めなかった。

【考察】ACは基本的に自己否定の構えを有し、AC高位の場合、主体性に欠け、他人の目や評価が気になり、自分の思っていることや感情をなかなか表現できないとされている。今回の調査でも、成績下位の学生は上記に当てはまる学生が多く、実習でも緊張や不安に加え、消極的に陥り易い状況が多くみられた。しかし、実習を重ねるごとに実習に対する適応や経験が養われ、成績下位の学生でも実習終了後、AC値が全体的に減少し、実習に対して積極性が現れ、第3期の実習では良い結果を残す学生もみられた。このことは、第2期と第3期との間隔は2週間と短く、実習に対するモチベーションが比較的保たれた状態と考え、学生によってはあまり期間を空けずに、実習を行っていくほうがよいのではないかと考える。また、学校での準備期間中に、学生の実習に対するモチベーションを如何にして維持するかは教員の取組み・指導を明確にすることで、学生が実習を有意義に実施できるものと考える。

【まとめ】今回、実習を有意義に実施することを目的に、3年生を対象にTEGを用い、実習に対する自我変化から実習体制について検討した。その結果、実習間の間隔が短いほど学生の実習に対するモチベーションが保たれ、成績下位の学生においても、実習終了後には良い結果で終了できることが確認できた。

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© 2008 日本理学療法士協会
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