理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 417
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教育・管理系理学療法
解剖運動学用語の記銘に対する熟達訓練の効果
山崎 裕司柏 智之宮崎 登美子
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キーワード: 熟達訓練, 理学療法, 記銘
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抄録

【目的】複雑な知識や技能は,より単純な知識や技能の組み合わせによってできており,複雑な知識や技能を習得するためには,単純な知識や技能が流暢に利用できる必要がある.流暢性を向上させるために考案された熟達訓練は,物事の記憶,保持,応用性の点で優れた成績が示されている.今回,解剖運動学用語の記銘課題に対して熟達訓練を導入し,その効果について検討した.
【方法】対象は,理学療法学科2年次生69名である.対象者には,研究の目的を説明し,学会発表に関する同意を得た.
熟達訓練導入前には,筋肉作用,髄節,支配神経,運動方向に関する筆記試験(配点20点)が行われていた.この試験2週間前には,出題される筋肉の図(99個),運動の図(39枚),模範解答が配布された.支配神経と髄節を記憶する筋肉は,それぞれ84個,94個であった.試験問題30問の正答率は,80%以上7名,70%以上16名,60%以上16名,50%以上14名,50%未満15名であった.
熟達訓練では,2種類の記憶カードを対象者に作成させた.ひとつは,表に筋肉の図,裏にその名前,作用,支配神経,髄節が記されたカード55枚である.もうひとつは,表に運動の図,裏にその姿勢,運動名を日本語と英語で記されたカード39枚である.次に,以下の4種類の課題を発表した.筋肉の図を見て3分30秒以内に主な作用をすべて答える.同様に2分30秒以内に支配神経を答える.2分30秒以内に髄節を答える.運動の図を見て2分30秒以内にその姿勢名と関節・分節名,運動名を英語で答える.
熟達訓練では,設定された時間内に答えられるカードの枚数を増加させることが求められた.時間内に答えられるようになった後は,時間を短縮することが目標とされた.熟達訓練は授業時間外に自主的に行われた.
開始約1ヶ月後,上記の課題による試験(配点20点)が実施された.試験では10秒の遅延や,解答できないカードがあった場合,1点が減点された.試験後,熟達訓練に関する感想文を提出させた.
【結果】試験では,54名が20点,8名が14-19点を獲得した.7名は得点を獲得することができなかった.7名に対しては2週間後に追試験が実施された.
筆記試験で70%以上の正答率であった対象者23名は,全員が20点を獲得した.69%以下の学生でも,67%が20点を,82%が16点以上を獲得した.
感想文では,想起しやすくなった(68%),記憶した内容が忘れにくい(15%),授業内容が理解しやすくなった(32%),自信になった(33%),などの報告が見られた.
【考察】熟達訓練後の試験は,短時間の間に想起しなければならない点で難易度が高いものと考えられたが,結果的には89%の対象者が高得点を獲得した.また,その効果は筆記試験における成績が低得点であった対象者にも認められた.熟達訓練は解剖学や運動学などの基本的知識の記憶方法として活用できるかもしれない.

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© 2008 日本理学療法士協会
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