理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 809
会議情報

教育・管理系理学療法
事例を理解する学生の視点
表現が与える影響
木村 孝河元 岩男明日 徹田中 裕二松岡 美紀熊丸 真理山下 慶三松崎 哲治花田 穂積峰岡 哲哉松木 直人牧井 昭憲崎田 正博齋藤 貴文
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抄録
【目的】
問題解決能力や臨床推論という能力は、疾患ではなく対象者に対して「なぜ」という疑問を持ち、それを問題としてとらえることからはじまる。問題基盤型学習(以下PBLと略)は事例から「なぜ」ととらえる視点形成に有効的な学習方法であるといわれている。
前回PBLを導入し事例を理解する学生の視点について、事例に提示される語句から検討をおこなった。その結果、学生は疾患を表す情報に強い反応し疾患を中心にした事例理解の結果が示唆された。
今回、同様の事例内容で前回反応が低かった項目に関して表現の修正を行い、表現修正前・後の項目の反応率の変化から事例を理解する学生の視点にどのように影響を与えたのかという点について検証を行ない報告する。
【方法】
対象者は、当校理学療法学科2005年、2006年度各68名を対象とした。方法は、前年度学生の反応が低かった情報に対し、省略しない表現・比較できる情報・強調する情報を追加表現した。事例内容については前回と同様に担当教員によって事例の中に疾患そのものを表すもの、状態像を表すもの、一般情報その他をキーワードとして設定し作成した。次に自由記述式にて60分間で学生が記述したキーワード(以下、語彙)とキーワードの一致率を指標とし、前回との結果と全体及び項目レベルでの一致率をマン・ホイットニー検定・オッズ比を用い反応率の違いを分析した。
【結果】
1. 2006年度では一致率50-60%が46%を占め、語彙とキーワード一致率(全体)の分布に有意差がみられた(p<0.001)。
2. 全体的視点の傾向は疾患中心であり第一報の結果と違いは認められなかった。
3. 表現方法の基準に基づいて修正した項目は有意に反応率が高かった。(p<0.01)
【考察】
前回反応が低い項目は、COPD・疾患の状態を表す情報に強く認められた。今回学生の反応が低い項目に対して表現の修正を行なった結果前年度と比較して有意に変化が示唆された。これは省略しない情報、比較できる情報・強調する情報によって事例に対する受動的な学生の注意から学生自身が事例の中から疑問に持つという能動的な注意が誘発され、その結果視点形成の変化がもたされたと考えられた。
また事例全体での学生のキーワード反応に関して前年度と比較すると、前年度に比較して有意差が示唆され一致率50-60%部分に集中する傾向であった。これも同様に表現の修正によって学生に対する担当教員の意図が明確化されたため反応率も改善されたと考えられた。
今回学生の事例理解の基本的な視点は、前回と同様に疾患を示す情報に基づいたものであった。これは学生自身が疾患の状態像に関する具体的イメージが形成されていないためと考えられた。しかし疾患を示す情報に対して、正常と異常の比較できる情報や強調する情報の追加によって学生の反応・視点形成を変化させる可能性は示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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