理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-001
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理学療法基礎系
運動イメージ想起が脊髄反射の利得調節に及ぼす影響について
青山 敏之金子 文成
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抄録

【目的】運動イメージ想起に伴う脊髄反射の変化に関しては多くの相反する結果が報告されており,未だ一定の見解が得られていない.本研究の目的は運動イメージ想起によるH反射と伸張反射の振幅の変化を比較することにより,運動イメージ想起がγ運動ニューロンを介した脊髄反射の利得調節に及ぼす影響を明らかにすることである.また,その効果がイメージ想起する運動の強度や方向に依存して変化するかを明らかにすることである.
【方法】十分な説明の上同意の得られた健常者を対象とした.測定肢位は椅子座位とし,実験用に作成された伸張反射測定装置の上に左下肢を載せ安楽な姿勢を保った.測定開始前,被験者は足関節底屈・背屈の随意性最大収縮(MVC)と50%MVCを実施した.そして,それぞれの強度の運動イメージ想起を行えるよう練習した.筋電図は表面皿電極を使用し,前脛骨筋,ヒラメ筋,腓腹筋からH反射と伸張反射を記録した.H反射は脛骨神経の電気刺激により導出した.伸張反射は角速度を3段階に設定し,足関節の他動的な背屈運動に伴う伸張反射を記録した.実験課題1:安静保持,足関節背屈運動イメージ想起(背屈イメージ),足関節底屈運動イメージ想起(底屈イメージ)とした.想起する運動イメージの強度はMVC時のものとした.実験課題2:実験課題1の条件に加え,想起する運動イメージの強度を50%MVCとした底屈・背屈イメージを実施した.統計学的解析はH反射,伸張反射の振幅に関して条件を要因とした反復測定による一元配置分散分析を実施した.
【結果】実験課題1:H反射では条件を要因とした主効果はなかったが,伸張反射では底屈イメージ時に安静時よりも有意に振幅が増大した.実験課題2:背屈イメージではH反射,伸張反射ともに想起する運動の強度の変化に伴う主効果はなかった.底屈イメージでは,H反射の振幅に変化がなかったが,伸張反射ではイメージ想起する運動の強度がMVCの時のみ安静時よりも有意に振幅が増大した.
【考察】H反射と伸張反射ではそれぞれの反射回路に筋紡錘が含まれるかどうかに相違がある.つまり,反射回路に筋紡錘が含まれる伸張反射はそうでないH反射に比べγ運動ニューロンによる筋紡錘の感度変化の影響を受けやすいといえる(Jeannerod, 1995).よって,本研究において運動イメージ想起に伴い伸張反射の振幅が選択的に増大したことは,運動イメージ想起がγ運動ニューロンを介した脊髄反射の利得調節に寄与している可能性を示唆する.さらに,その効果はイメージ想起する運動の強度と方向に依存するといえる.
【まとめ】 本研究ではH反射と伸張反射を用い運動イメージ想起が脊髄反射の利得調節に及ぼす影響について検討した.その結果,運動イメージ想起により選択的に伸張反射の振幅が増大した.これは運動イメージ想起がγ運動ニューロンを介した脊髄反射の利得調節に寄与していることを示唆する.

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© 2009 日本理学療法士協会
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