理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-022
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理学療法基礎系
非荷重下で膝関節固定の有無がラット膝蓋下脂肪体に与える影響とその病理組織学的変化
庵 裕滋細 正博山崎 俊明松崎 太郎小島 聖渡邊 晶規北出 一平上條 明生荒木 督隆木村 繁文高橋 郁文内田 健作成瀬 廣亮長谷川 美欧東 美由紀
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キーワード: 後肢懸垂, 固定, 脂肪細胞
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抄録

【目的】
これまで、ラットの膝関節の病理組織学的変化に関する研究が数多く報告されている.その多くは後肢懸垂による非荷重の影響の報告や、ラットの関節に対してギプス固定等を行い、関節の不動化に伴う変化に関しての報告である.だが、非荷重の状態における関節内の膝蓋下脂肪体に関する報告は筆者が検索した限りない.また臨床の場面において非荷重とされる整形外科的な疾患においては何らかの固定がなされる場合が多い.そこで今回、後肢懸垂法を用いて非荷重の状態にするだけでなく、片側のラット膝関節をギプス固定し、非荷重の状態における関節固定の有無がそれぞれの膝関節の膝蓋下脂肪体に与える影響について、病理組織学的に観察した.
【方法】
9週齢のWistar系雄性ラットを使用した.実験群はそれぞれ5匹ずつ1) 2週間片側の下肢をギプス固定し後肢懸垂を行った群(固定側2週IS群、非固定側2週S群) 2) 4週間片側の下肢をギプス固定し後肢懸垂を行った群(固定側4週IS群、非固定側4週S群) 3) 2週間通常飼育した対照群 (2週C群) 4) 4週間通常飼育した対照群(4週C群)とした.ラットはケージ内を自由に移動でき、水や餌は十分に摂取することができた.なお、本研究は金沢大学動物実験委員会の承認を得て行ったものである(承認番号AP-081140).ギプス固定、後肢懸垂の方法は松崎の方法で膝関節をギプス固定し、股関節や足関節には制限が及ばないようにした.また、山崎の方法で後肢懸垂モデルを作成し、後肢を非荷重の状態とした.
【結果】
C群に比べ実験群の総てで、脂肪体中の脂肪細胞の大小不同化(萎縮)や、脂肪体内の線維増生が確認された.2週4週共にS群に比べIS群では脂肪細胞の大小不同化(萎縮)、線維増生が著明であった.2週IS群と4週IS群、2週S群と4週S群それぞれの間には差違はなかった.
【考察・まとめ】
後肢懸垂を行い非荷重としたラットの膝関節には、固定側、非固定側ともに膝蓋下脂肪体中の脂肪細胞の大小不同化(萎縮)や線維組織の増生が確認された.また、非固定側よりも固定側の方がより重度の変化を示した.2週間と4週間で懸垂期間による差違はなかった.これより、後肢懸垂による非荷重により膝関節の膝蓋下脂肪体の萎縮を生じさせること、加えて関節固定を行うことでより著明な萎縮を生じさせることが示唆された.また、懸垂期間よりも関節固定の有無が膝蓋下脂肪体に与える影響が大きいことが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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