理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-021
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理学療法基礎系
加齢ラット膝関節における神経周囲の組織学的変化
―若年ラット膝関節拘縮モデルとの比較―
長谷川 美欧細 正博松崎 太郎小島 聖渡辺 晶規東 美由紀庵 裕慈内田 健作梶野 有香成瀬 廣亮
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キーワード: ラット, 加齢, 神経周膜
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抄録
【目的】
加齢は身体組織の変化を生じさせる事はよく知られており,我々が臨床的に対処する事の多い運動器に関しても様々な研究が行われている.加齢により関節可動域が減少することが知られているが,関節可動域に対する神経の滑走性の寄与についての報告は演者が検索した限りではこれまでなされていない.そこで,本研究では加齢ラットの神経周囲にどのような変化が見られるかを光学顕微鏡下で病理組織学的に観察し,先行研究により明らかにされて来た若年ラット膝関節拘縮モデルの神経周囲の変化と比較する事を目的とした.

【方法】
対象としてFischer 344ラット14匹を用いた.加齢群ラット(n=7)は14ヶ月齢で入手し,1匹ずつケージに入れて4週間飼育した.対照として,膝関節を2週間不動化し関節拘縮を作製した群(以下拘縮群,n=6),制約を加えずに飼育したラット(対照群,n=6)を使用した.拘縮群と対照群は8週齢にて入手し,1週間の馴化期間を経た後に実験を開始した.ラットはケージ内を自由に移動でき、水、餌は自由に摂取可能であった.飼育期間後、エーテル深麻酔にて安楽死させ、可及的速やかに両下肢を股関節より離断し標本として採取した.採取した標本を中性緩衝4%ホルマリン液にて組織固定を行った後に脱灰し、膝関節の切り出しを行ったあとに中和、パラフィン包埋を行った.ミクロトームにて3μmで薄切した標本にヘマトキシリン・エオジン染色を行い,光学顕微鏡下で後部関節包を病理組織学的に観察した.なお,この実験は金沢大学動物実験委員会の承認を受けて行われた.

【結果】
対照群では神経束と神経周膜の間には空隙(神経周囲腔)が観察されたが,拘縮群と老年群ではほぼ空隙が消失しており,神経束と神経周膜の接着が疑われる像が観察された.また,神経周膜の組織は対照と比較して粗硬となっていた.

【考察】
我々は先行研究で拘縮モデルでの神経周膜の変化を報告したが,今回加齢ラットにおいても類似の変化を観察した.従って,加齢と不動がそれぞれ神経周囲組織に及ぼす影響には、何らかの共通した機序が存在している可能性が示唆された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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