理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-033
会議情報

理学療法基礎系
運動イメージの言語化が運動イメージやパフォーマンスの改善に与える影響について
杉山 昇平斎藤 暢池田 由美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】運動イメージを利用したメンタルプラクティスでは、イメージが不鮮明な場合、その効果は低いとされるが、イメージを鮮明にするための統一した見解はない.そこで本研究では、運動イメージの言語化がイメージやパフォーマンスの改善に与える影響について検討した.

【方法】対象は、ヘルシンキ宣言に則り、本研究の目的・方法及び危険性等を説明し承諾を得た健常者25名(平均年齢21.0±0.9歳)とした.課題動作は非利き側の上下肢による8の字車椅子駆動とした.両群ともに、まず、イメージによる心的駆動時間を計測し、その鮮明度をVisual Analog Scale(VAS)により測定した後、実際の駆動時間を計測した.以後、この手順を5回繰り返し、5回目の記録を介入後の記録とした.実際駆動後、課題動作の問題点や改善点について言語化させ、その内容に注意しながら心的駆動を実施する群をA群、言語化せずに心的駆動を実施する群をB群とし、対象者を無作為に割り当てた.介入前・後の心的駆動時間の絶対誤差率(以下、心的誤差率)とVAS、介入による実際駆動時間の改善率、各イメージ実施後の実際駆動時間の短縮時間を比較した.統計処理には、SPSSver.16.0を用いた.

【結果】介入前・後でのVASと心的誤差率は、A群ではそれぞれ4.1、22.6±22.1%から8.1、28.7±17.8%となり、B群ではそれぞれ3.5、25.5±16.1%から7.8、24.7±13.5%となった.介入前・後でのVAS、心的誤差率ともに群間で有意差はなかった.また、群内の比較では、両群ともに心的誤差率の改善は見られなかったが、VASは有意に改善した(p<0.01).実際駆動時間の改善率は、A群は34.7±7.3%、B群は26.7±7.9%となり、A群の方がB群よりパフォーマンスが改善した(p<0.05).また、試行1回目のイメージ実施前後の実際駆動時間を比較すると、A群は7.3±4.2秒、B群は4.5±3.3秒それぞれ短縮し、A群がより短縮する傾向を示した(0.05≦p<0.10).

【考察】本研究の結果より、イメージと実際の動作を繰り返すことで、イメージの鮮明性は改善したが、先行研究のような心的誤差率の改善は見られなかった.また、両群間で有意な差はみられず、運動イメージの改善における言語化の影響は小さいと考える.しかし、A群では、試行1回目のイメージ後の駆動時間はより短縮する傾向があり、実際駆動時間の改善率も有意に大きくなった.このことは、運動イメージの言語化により、自身の動作について内省し、動作方略や知覚すべき情報を明確にすることが可能となり、運動イメージによる課題に対する理解や感覚情報を運動プログラムに変換する認知過程のリハーサルがさらに促進され、運動プログラムの改変につながり、パフォーマンスの改善に至ったと考える.

著者関連情報
© 2009 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top