理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-042
会議情報

理学療法基礎系
体幹前後屈時の仙腸関節痛と腰椎前弯角度との関係
津田 拓郎矢倉 千昭
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】腰痛部位は,腰背部のみならず仙腸関節部にもみられ,仙腸関節由来の疼痛は腰痛全体の約10%であるといわれている.しかし,仙腸関節痛と立位姿勢における腰椎・骨盤アライメント評価についての報告は少ない.近年,傾斜計を用いた関節可動域の評価などの先行研究が散見されるようになり,我々も九州理学療法士・作業療法士学会で脊椎アライメント評価方法について報告している.そこで,本研究では,傾斜計を用いて,体幹前後屈時に仙腸関節痛のある者の立位時における腰椎前弯角度と骨盤傾斜角度を測定し,仙腸関節痛とこれらの角度との関係について調査を行った.
【方法】対象は,一般成人25名(男性21名,女性4名),平均年齢31.7±9.0歳であった.なお,対象者には,書面にて本研究の目的と内容を説明し,同意を得たうえで測定を行った.仙腸関節痛は,直立位から体幹前後屈をさせて仙腸関節痛の有無を確認し,前屈または後屈時に疼痛があった者を仙腸関節痛有群,関節痛がなかった者を無群とした.腰椎前弯角度と骨盤傾斜角度の測定は,デジタル傾斜計(DL-155V,STS社)を用いて測定した.傾斜計測定の指標は,第3腰椎棘突起,上前腸骨棘,上後腸骨棘とし,腰椎前弯角度は傾斜計の上端または下端を第3腰椎棘突起に当てて上位腰椎傾斜角度,下位腰椎傾斜角度を測定し,腰椎前弯角度を算出した.骨盤傾斜角度は,上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線の傾斜角度を測定した.各々の傾斜角度は3回測定し,その平均値を用いた.統計学的分析として,仙腸関節痛の有無による男女比はχ2検定を,年齢,身長,体重,BMI,腰椎前弯角度および骨盤傾斜角度の比較は対応のないt検定を用い,危険率5%未満をもって有意とした.
【結果】仙腸関節痛有群は10名,無群は15名で,仙腸関節痛の有無による性,年齢,身長,体重およびBMIの有意差はなかった.仙腸関節痛の有無による腰椎前弯角度および骨盤傾斜角度の比較では,仙腸関節痛有群は,無群に比べて腰椎前弯角度が有意に減少していた(p<0.01).
【考察】本研究の結果,体幹前後屈時に仙腸関節痛がある者は,腰椎前弯角度が小さいことが示された.上部体幹の荷重は腰椎前弯によって緩衝され,仙腸関節に対する荷重ストレスを軽減させている.腰椎前弯角度の減少は,仙腸関節に対する荷重ストレスを高め,仙腸関節痛の要因となっているのではないかと考えられる.
【まとめ】傾斜計を用いた腰椎前弯角度の定量的な評価は,仙腸関節痛の治療において有用的な評価方法となる可能性が示唆された.
著者関連情報
© 2009 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top