理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-087
会議情報

理学療法基礎系
上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋疲労における男女差に関する研究
坪井 宏幸藤本 恭平川西 誠児嶋 大介橋崎 孝賢森木 貴司杉野 亮人原田 健史上西 啓裕坂野 元彦伊藤 倫之田島 文博
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
近年,表面筋電図周波数解析による筋疲労の検討は数多くなされており,特に周波数減衰率と疲労の関係に関する報告は多い.男女間における脊柱起立筋の表面筋電図周波数解析の結果,男性の周波数減衰率は女性に比べ急激であり,有意に筋疲労しやすいことが判明している.今回我々は,肘関節屈曲・伸展時の筋持久性を評価するため,両側上腕二頭筋・上腕三頭筋に対して表面筋電図を用いて周波数解析を行い,男女間で比較・検討を行った.
【方法】
対象は本研究の趣旨を説明し同意の得られた健常成人20例(男性10名,女性10名,平均年齢23.25±1.68歳)である.まず筋力測定装置BIODEX system 3(BIODEX system社製)を用いて,肘関節90°屈曲位に固定し.肘関節屈曲および伸展を5秒間の等尺性収縮で最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction,MVC) を3回測定し最大値を測定した.次に視覚的フィードバックを行いながら肘関節屈曲および伸展の等尺性収縮をそれぞれの50%MVCで120秒間持続し,両側の上腕二頭筋と上腕三頭筋の表面筋活動を筋電図計(DANTEC社製)で測定した.尚,測定中に50%MVCの保持が不可能と検者が判断した時点で測定を終了した.表面筋電図は、多用途生体情報解析プログラムBIMTUSII(キッセイコムテック社製)を用いて高速フーリエ変換によるパワースペクトル解析を行った.周波数中央値(Median Frequency,MF)を筋疲労の指標とし,そのMFの減衰率を算出した.
【結果】
肘関節屈曲のMVCは男性51.35±10.41N-M,女性30.43±4.8 N-Mであった.肘関節伸展のMVCは男性48.78±11.38 N-M,女性29.2±6.52 N-Mであった.周波数解析の結果,男女共にMFは時間に伴い減衰した.上腕二頭筋の周波数減衰率は男性(‐0.52±0.13 )が女性(‐0.43±0.19 )より有意に大きかった(P<0.05).上腕二頭筋の持続時間は男性(54.75±16.49秒)が女性(72.55±23.01秒)より有意に短かった(P<0.05). 上腕三頭筋の周波数減衰率は男性‐0.56±0.2 ,女性‐0.48±0.25 で男女間に有意差を認めなかった.上腕三頭筋の持続時間は男性60.25±16.18秒,女性70.35±28.74秒で男女間に有意差を認めなかった.
【考察】
今回,男女間において上腕二頭筋の周波数減衰率は有意差を認め,女性に比べ男性の方が筋疲労しやすいが,上腕三頭筋の周波数減衰率は有意差を認めないことが判明した.上腕二頭筋と上腕三頭筋の疲労特性が男女間で異なる結果は筋線維タイプあるいは運動単位タイプによる可能性が考えられる.
著者関連情報
© 2009 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top