理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-167
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理学療法基礎系
視覚機能がバランス能力に及ぼす影響について
塩田 琴美野北 好春高梨 晃松田 雅弘川田 教平宮島 恵樹細田 昌孝池田 誠
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キーワード: 視覚, 姿勢制御, バランス
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抄録

【目的】姿勢を保持するためには、視覚、前庭覚、体性感覚からの情報が重要である.その中でも、視覚入力は、姿勢制御の上で重要な役割を果たしている.そこで、本研究では、高齢者の視覚と姿勢制御に焦点を当て、加齢による視覚機能の変化が高齢者のバランス能力に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】本研究は、了徳寺大学研究倫理審査委員会の承認を受けて行った.対象は60歳以上の高齢群11名(60歳-84歳、68.86±5.67歳)、若年群11名(18-21歳、19.09±0.54歳)であった.はじめに、対象者は、視野カメラ(水平画角92度)が取り付けられた帽子型のアイマークカメラ(EMR-8B、以下EMR,NAC Image Technology)を装着させた.EMRのキャリブレーション終了後、対象者をEqui-test上の起立台に立位姿勢とした.Equi-test内は、前景盤および側方には、白板を貼付した.外乱刺激として、Equi-test(NeuroCom International)を使用しSensory Organization Test (SOT) Condition6の前景盤、起立面(床面)ともに、被験者の傾きに伴い、それぞれが動く刺激を加えた.これら、Equi-testにおける重心動揺の解析としては、実行値面積(RMS)、軌跡長、矩形面積、X変位およびY変位を算出した.EMRデータに対しては、眼球運動の軌跡面積、平面面積を算出した.加えて、瞳孔径、輻輳および停留時間については、平均値を算出した.算出された各項目を若年者と高齢者にてt‐検定を用いて、解析を行った.
【結果】有意水準5%で有意差の認められた項目について、以下、高齢群(若年群)の値を記載した.Equi-testから得られたデータから算出した重心動揺の軌跡長にて、37.34±17.63cm(27.89±8.46cm)およびY変位にて2.67±1.93cm(4.48±1.98cm)有意な差を認めた.また、EMRから抽出したデータから、右眼では、平面面積値16.47±12.69 °2(20.11±43.20 °2)、停留時間0.70±0.62sec(2.82±5.72sec)、瞳孔径3.13±0.46cm(3.58±0.6cm)で有意差を認めた.また、左眼のデータにおいては、停留時間0.65±0.61sec(2.76±5.74sec)、瞳孔径3.30±0.59cm(3.60±0.48cm)において有意な差を認めた.
【考察】本研究結果より、高齢者では立位姿勢時の重心動揺が大きくなり、それに伴い眼球運動の軌跡は増大していた.これは、視覚情報を安定して中枢へ伝えるための網膜像のぶれを修正するために生じると考えられる.このため、視覚機能と姿勢制御の関係から、視覚情報が四肢のコントロールに重要であると示唆できる.

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© 2009 日本理学療法士協会
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