理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-009
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理学療法基礎系
マイオチューニング アプローチによる治療効果の検証
―痛み,関節可動域および日常生活動作の治療効果を中心として―
高田 治実川上 陽子小笠原 聖子高橋 真一今牧 悟瀬戸口 絵莉大澤 明人福島 健人江口 英範坂本 雄石垣 栄司神田 太郎豊田 輝斉藤 弘前原 弘幸
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抄録
【目的】本研究の目的は、一般的な理学療法(以下、一般理学療法)により、顕著な効果が出現しない患者に対してMTAを施行し、シングルケース実験計画法によりMyotuning Approach(MTA)の効果を検証することであった.
【方法】本研究は、3施設で試行した症例を用い、変更したABAB型の反復実験計画により実施した.研究期間は、平成19年3月30日~7月2日までの約3か月であった.症例は、一般理学療法を施行し十分な効果を認められない6症例(年齢:30歳~80歳、女性5例・男性1例)であり、シングルケース実験計画法に同意した者とした.施行時間は40分~60分とし、各症例の施行時間は一般理学療法およびMTAともにほぼ同時間とした.基礎水準期では一般理学療法、MTA導入期ではMTAを施行した.
各期における施行回数は、第一基礎水準期では全ての症例で3回、第二基礎水準期では1回~4回、第一MTA導入期では1回~3回、第二MTA導入期では1回~2回であった.
一般理学療法は、5症例が主に筋力強化、ROMex、温熱療法を施行し、1症例が温熱療法のみを施行した.MTAは、再現痛が出現する原因筋線維を治療部位とし、静的および動的施行法で治療した.評価は、一般理学療法およびMTAの施行前・後の痛み、痺れ、関節可動域、筋力、15cm台昇降および日常生活動作(ADL)などで行った.評価の計測は、痛み・痺れを変更したVAS、自動運動時の関節可動域をゴニオメーター、筋力をMMT、睡眠状態を筆者らが製作した睡眠スケールにより行った.尚、本研究は臨床現場で行ったため、研究期間、基礎水準期と操作導入期の施行回数および一般理学療法手技の種類などは統一しなかった.
【結果】一般理学療法では6症例全てに顕著な効果を認められなかったのに対し、MTA導入直後には痛み、痺れおよび運動機能などに顕著な効果を認めた.しかも、MTAでは施行から効果が現れるまでの時間である潜時が短時間であり即時的に効果が表れた.また、疼痛の改善により睡眠状態が改善した.
【まとめと考察】MTAを用いた治療効果の検討をシングルケース実験計画法のABAB型反復実験計画を変更して行った.一般理学療法では6症例全てに顕著な効果を認められなかったのに対し、MTA導入直後には顕著な効果を認め、潜時が短時間であり即時的に効果が表れた.それらのことから、他の因子の影響による改善の可能性が非常に少ないと考えられる.尚、疼痛が改善した直後にADL動作が可能となったことから、ADL動作が可能になった主要因はADL動作の阻害因子である疼痛が改善されたことであると推測される.
前記の結果より、MTAは痛み、痺れおよび運動機能を即時的に改善でき、心理状態を改善できる可能性が高い治療的アプローチであると推測される.
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© 2009 日本理学療法士協会
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