理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-076
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理学療法基礎系
痛覚検査における閾値と加齢による変化について
宮本 靖義戸田 香富永 敬三加藤 嘉晃柴田 香織對馬 明矢澤 浩成細川 厚子戸田 秀彦木山 喬博
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キーワード: 痛覚検査, 基準値, 加齢変化
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抄録

【目的】身体機能は加齢に伴って低下するが、感覚機能についても低下することが知られている.理学療法の評価においても皮膚感覚の検査はよく行われているが、痛みがどの程度かを知るということは重要である.しかし、定量化された痛覚基準値が成書に記載されていないのが現状である.今回我々は、痛覚閾値を知るため、高齢者と若年者について測定を行い比較検討することを目的として本研究を行った.
【方法】本研究の趣旨を理解し、参加に同意を得られた若年健常者32名(男性9名 女性23名 平均年齢20±1歳)と高齢者11名(男性2名 女性9名 平均年齢83±8歳)を対象とした.測定にはユフ精器製の定量知覚針を用いた.本測定器は皮膚を鉄針で直接刺激するものであり、針の重量は1gを最小量とし、以降2g~20gまで2g毎の増量が可能である.疼痛測定は被検者を閉眼とし、座位にて机上で実施した.両側前腕掌側面を対象とし、前腕の長軸方向に正中線を引き、肘窩をA、橈骨手根関節をDとしAとDを三等分する位置に近位測定点B、遠位測定点Cを決定した.測定点B・Cには直径3mmの円を設定し、測定域内で5回測定し、2回以上痛みを感じた重量を閾値とした.測定点B・C間比較、左右比較、若年者と高齢者の比較にはそれぞれマンホイットニー検定を用いて、危険率5%未満を有意とした.
【結果】若年者の近位平均値は6.1±3.2g、遠位平均値は6.5±3.4gであり両者の間に有意差は認めなかった.一方、高齢者の近位平均値は8.2±4.5g、遠位平均値は9.8±5.4gであり有意差を認めた.さらに若年者と高齢者の比較では近位、遠位の両測定点に有意差を認めた.
【考察】痛覚検査については安全ピン等の軽い力を用いるあいまいさや、主観に影響される痛みの有無と、痛みを感じるまでの時間によって判断するため、結果は定量性に欠ける.また、基準値がないため加齢による変化や、低下の程度を客観的に評価することが困難である.本研究では痛覚閾値のおおよその基準値を知ることを目的とし、若年者ではおよそ10g以下、高齢者ではおよそ16g以下が正常値と考えられた.年齢差を比較検討した結果、若年者と高齢者の間には有意差が認められ、若年者において閾値が低い傾向がみられた.これは痛覚についても、加齢に伴う低下がみられることを示している.左右差については若年者、高齢者共に認めなかったが、部位による差は、前腕内の近位と遠位でさえ生じたことから、今後さらに異なる身体部位における測定の必要が示唆された.今回は43名を対象として検討したが、今後対象者を増やすことによりさらに信頼性の高いものしていきたい.また、性差・日内差・体格差による影響についても検討すべきであると考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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