抄録
【目的】
バランス評価を行い、その情報をリハ科と病棟で情報共有することが転倒予防に繋がると考え、BBSが患者の院内転倒予見に有効かを検討する.
【方法】対象者は、回復期病棟入院中、BBS評価が可能であった患者29例のうち、院内で転倒した13例を転倒群、転倒せず、退院された16例を非転倒群と設定する.算出方法は、転倒群・非転倒群のBBS総得点を比較.転倒要因に関連する項目を転倒報告書58件と比較しBBSから抽出する.
最後に、転倒群と非転倒群間の平均得点差および、平均得点で検定する.
【結 果】
BBS評価を実施した29名を、BBS得点・年齢・疾患・高次脳機能障害・認知症について検討した結果、BBS得点において、有意差が確認された.BBS評価を実施した転倒群の転倒原因と転倒報告書58件の転倒原因を比べると、9項目が一致し、一致項目における「立ち上がり・物を拾う・方向転換・STEP・リーチ」について有意差が確認された.
最後に、院内転倒リスク予見の有効性では、一致9項目に有意差が確認された.
【考 察】
BBSにおいて、総得点だけに注目するのでなく、評価項目を分析して9項目、特に5項目の動作に着目することが重要である.具体的に、9項目、特に5項目において、患者のADLを制限、または重点的な介助が必要であると考える.今回の調査では、高次脳機能障害・認知症に有意差は認められなかったものの高次脳機能障害においては、転倒群・非転倒群の間に20%近い差が認められており、バランス・認知症・高次脳機能障害・外部環境を含めた取り組みが転倒予防に必要となると考える.
【結語】
BBS得点と動作が転倒に関係し、転倒報告書の転倒要因動作がBBS9項目と一致したことはBBSが院内転倒リスク予見に有効であると考えます.
定期的なBBS評価と、職種間でのその情報共有が転倒予防の一助になると考える.今後、BBS9項目、特に5項目が患者のバランス能力をスクリーニングする簡便な指標と成りえるか調査を継続していく.